サイエンス

2025.06.15 11:00

ヒトラーとプーチン、トランプに共通する「自己愛性リーダーシップ」 その起源を探る

ドナルド・トランプ米大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2018年7月16日、フィンランド・ヘルシンキにて(Chris McGrath/Getty Images)

屈辱感を与えてくる口やかましい父親と、思慕の対象である理想的な母親とが同時に存在する環境は、ヒトラーの自我の発達をめちゃくちゃに損なったのかもしれない。父親がヒトラーに深い無力感、恐怖、怒りを植え付けた一方、母親は誇大性、特権意識、特別感を植え付けた。こうした内面的な矛盾は反応性自己愛を増大させ、脆弱な自己価値観を誇大な優越感という幻想で下支えするようになるのではないかとチフチは論じている。

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ヒトラーが権力を掌握すると、これらの傷は破滅的な作用をもたらした。ヒトラーは周囲にイエスマンばかりを集め、異論を一切許さず、揺るぎない忠誠心を求めた。自分を批判する者は裏切り者と決めつけ、国民全員をいけにえにした。死の間際にあってさえ、自らの責任をすっかり棚に上げ、自分以外のあらゆる相手を非難した。遺書には「側近の将軍たちに裏切られた」と記されている。

チフチは、幼少期の精神的トラウマに根ざした「慢性的な自己愛憤怒」がヒトラーの持続的なパターンであり、それは深い傷を負った人格が、満たされたいがゆえについ支配的にふるまってしまうことと一致していると示唆する。

2. ウラジーミル・プーチン

プーチンの幼少期にも、ヒトラーと同様の情緒的主題が多くみられる。独ソ戦で甚大な被害を受けたレニングラード(現サンクトペテルブルク)に1952年に生まれたプーチンには、すでに鬼籍に入った兄が2人いた。ヒトラーの両親がそうだったように、家庭には喪失感がつきまとっていた。

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負傷して退役した元軍人の父親はプーチンに対して厳しく、感情的によそよそしく、暴力を振るったといわれる。対照的に、母親は温もりと安らぎを与えてくれる数少ない存在だった。

ヒトラーの場合と同じく、冷淡な父親と子育て熱心な母親という相殺し合う心理的原動力に、代用児とされた状態が相まって、チフチの分析の中核を成している。

プーチンもまた貧困の中で育った。戦争と苦難の爪痕に囲まれ、地元は荒れた地域で、支配的かつタフな人間としてふるまうことが有利に働いた。強さと生存競争をめぐる幼少期の体験が、常に無敵であるように見せる必要性をプーチンに植え付けたのかもしれない。

これは成人後のプーチンの厳格なイメージ戦略に反映されている可能性がある。プーチンは、深海潜水、狩猟、乗馬、柔道、上半身裸でのアウトドア活動など、マッチョな男らしさを演出してきたことで知られる。チフチはこれらを代償行動とみなし、子どもの頃に心底渇望したであろう支配性を誇示する試みだと解釈している。

プーチンの政治手法にも同じことが言えるとチフチは主張する。厳格なメディア統制、反対意見に対する寛容さの欠如、強硬な外交政策などだ。

チフチによればこれらは、情緒的不安定性に由来する反応性自己愛の顕著な特徴である。「プーチンの政治手法には、彼の中で起こった尋常ならざる心理的化学反応の結果が直接表れている。つまり、プーチンのリーダーシップは自己愛性政治的リーダーシップであり、両親と切り離して評価することはできない」

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翻訳・編集=荻原藤緒

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