サイエンス

2025.06.15 11:00

ヒトラーとプーチン、トランプに共通する「自己愛性リーダーシップ」 その起源を探る

ドナルド・トランプ米大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2018年7月16日、フィンランド・ヘルシンキにて(Chris McGrath/Getty Images)

「建設的な自己愛」と「反応性自己愛」

「自己愛」という言葉には多くの人が何となく否定的な印象をもっているが、心理学ではその特性すべてを本質的に病的なものとみなしているわけではない。チフチも研究の中で「建設的な自己愛」と「反応性自己愛」の2つに大別している。

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建設的な自己愛は、安定した情緒環境に育まれた正常で健全なものだ。支援、挑戦、承認を適度に与えられた子どもは、自信に満ち、逆境を乗り越える精神的回復力をもった大人に成長する傾向がある。こうした発達段階を踏むと、地に足のついた自尊心が育まれ、健全なリーダーシップ・スタイルが生まれる。

反応性自己愛は、ネグレクト(育児放棄・怠慢)や一貫性のない育児、虐待的な幼少期体験への反応として形成される傾向がある。このような経験をした子どもたちは壮大な自己イメージを構築しがちだが、それは必ずしもエゴ(自我)の産物ではなく、むしろ切実な心理的必要性に基づいている。この誇張された自己意識は、防衛機制として機能し、羞恥心や無力感、無価値感といった感情に対する緩衝材となる。

時間の経過とともに、とりわけ支配や優位性が報いられる環境においては、こうした防衛機制が強化されやすい。自己イメージ、権威、承認が常に価値あるものとみなされる環境(政界など)では、反応性自己愛が人格の固定化につながる可能性がある。

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チフチは、研究対象者3人の子ども時代に繰り返しみられる発達主題を4つ特定している。

・権威主義的で懲罰的な父親
・甘やかしたり感情の代償を提供したりする母親
・幼少期のトラウマや感情の放棄
・非現実的かつ大きな期待やプレッシャー

ここからは、これらのパターンがヒトラー、プーチン、トランプの人生においてどのように展開され、彼らのリーダーシップ・スタイルを形成していったのかを探っていこう。

1. アドルフ・ヒトラー

ヒトラーの幼少期は、感情的対立を特徴としている。父アロイスは権威主義的で、アドルフに鞭をふるって体罰を与えがちだった。絶対服従を求め、愛情を示すことはほとんどなかった。

心理学者アリス・ミラーの分析をはじめとする歴史的証言からは、恐怖に支配された家庭の様子が浮かんで見える。幼いアドルフはしょっちゅう殴られ、厳しく躾けられていたと伝わる。

対照的に、母クララはアドルフを溺愛した。その前に生まれた子を3人亡くしており、アドルフに対して過保護で、感情的に依存していた。チフチを含む心理学者の多くは、ヒトラーを「身代わりの子供(代用児)」の典型例だと評している。死んだ兄弟が母親の心に残した空洞を埋める役割を無意識化で担わされていたのだ。クララの目にはアドルフが、生き残って成功し、家族の痛み苦しみを贖うべき子どもとして映っていたのだろう。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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