10:悔しいと感じたことはありますか?
不当逮捕されたことですね。あれは悔しかったですよ。それ以外はあまりないです。悔しいと思うのは、他人と無意識のうちに比べているということだと思うので。人は人。自分は自分。細胞レベルで違うので。自分の細胞一つひとつを大事にしようというスタンスで生きております。
11:ラッパーになったきっかけは?
藝大1年生の時の学祭でラッパーを募集していて、それに応募したのが最初です。
きっかけはレイシャル・プロファイリング的なことで。
たぶん冗談だったと思うんですけど、私が初音ミクの歌を口ずさんでいたら、同学年の学生から「その見た目で初音ミクを歌うとか(笑)」とギャップがありすぎるようなニュアンスで笑われたんです。
私は日本生まれの日本育ちだけど、外見はそう見えない。そういう歪みみたいなものや偏見を、自分が素になってラップでさらけ出すこともひとつの表現なんじゃないかと思ってやろうと決めました。それが今、自然と仕事になっているという感じです。
12:「これは努力した」と思うことは何ですか?
よく「天才」と言われるのですが、「秀才」であるように努力しました。天才は努力ではなく天性のものといわれがちですが、秀才は努力しますよね。だから天才と言われた時こそ、懐疑的な視点を取り入れるように意識しています。着ぐるみ制作もラップも、生活することも、全部がんばっています。天才1%、秀才99%です。
13:物事を選択する時の基準は?
量産型の製品を買わない。
資本主義社会でこれを実行するのは難しくて、リアルで全然できていないんですけどね。
大前提として、自分が社会運動に参加していることを忘れないように意識すること。
生きているだけで政治ですからね。
14:成功とは何だと思いますか。
今まで失敗してきたことを超える体験。
何億円稼いで大豪邸に住むのが成功ではありません。
これまでの失敗を超えながら、小さな成功を積み重ねていくと大成功になるという感覚ですね。
15:影響を受けた人は誰ですか。
岡本太郎です。岡本太郎のアートは、イキイキしていてカッコよくてポップでわかりやすい。
彼の文化人類学的な思想や、原点に帰れみたいな考え方は、アフリカ的な信仰にも通じます。
今も常に岡本太郎には惹きつけられています。
16:自分を突き動かす原動力は?
ドーパミンです。
17:しいてライバルをあげるとしたら誰ですか。
岡本太郎です。
18:最近注目しているアーティストはいますか?
ラッパーのダニー・ジンさんです。彼はパレスチナと日本のミックスで、まだ20歳なのに社会的なリリックを突いてくるんです。植民地主義的なことや、白人至上主義的な世の中を逆転してフラットに見ていこうというメンタリティを感じる。彼のラップを聞くと、あ、背筋を伸ばさなきゃという気もちになります。とてもいいアーティストだと思います。


