パーパスを会社法の中心にすべき
──著書の重要ポイントのひとつに、「企業のパーパスを、世界各国の会社法の中心に据えるべきだ」という項目があります。
メイヤー:世界中のほぼすべての会社法に共通する基本的概念がある。それは、「企業幹部の義務は会社の成功を促進することだ」というものだ。しかし、「成功とは何か」という定義は記されていない。従来の解釈では、法律や規制に反しない限り、企業は成功を促進すべく何でもできる。
企業が革新的な方法を見いだす自由を与えられ、株主に利益をもたらすのはいいことだ。とはいえ、明白な命題とも言うべき基本条件がひとつある。「他者を犠牲にして利益を得てはならない」ということだ。従業員や環境、サプライヤーが犠牲になるとしたら、世間はそれを「真の利益」とはみなさない。人々の怒りを買う。
──重要ポイントのひとつである「測定とファイナンス」の箇所で、教授が取り組んでいるイニシアティブが紹介されています。同プロジェクトのカギは「測定」と「管理会計システムの構築」だそうですね。
メイヤー:オックスフォード大学を拠点に「パフォーマンス再考イニシアティブ」を始めて約4年がたつ。多くの企業や金融機関との協働だ。フォーカスしている点のひとつは、企業が環境や自然に与える影響と、それを業績測定に組み込むことだ。
なぜ、「測定」と「管理会計システムの構築」が重要なのか。利益につながる問題解決法を実現するためのカギは、取締役会から現場まで、全従業員が、目的の重要性を認識し、諸部門の業務に取り入れることだからだ。取締役会が自社の目的を打ち出し、全社を挙げて徹底しない限り、大きな変化は期待できない。現状維持派の中間管理職などに阻まれてしまう。
そして、目的の達成度を具体的に示すことが重要だ。うまくいっているかどうかをどのように測定すべきか? 目的達成に向けて、業績の何を正すべきなのか? こうした点を検討する必要がある。
基本的には、自社が社会や自然界、サプライヤー、従業員などに及ぼす影響を組み込むかたちで、事業の重要業績評価指標(KPI)を用いるのがいい。そうすることで、企業は、問題解決に向けた達成度を定量的な指標で示すことができる。
それを金銭的価値の創造につなげるには、「成功」の概念を管理会計システムに反映させる必要がある。それによって、企業は、自社が及ぼす影響も含め、「事業の真のコスト」を負担することになる。「真のコスト」は、企業が目的を達成して利益を上げ、その達成過程で問題を引き起こさないようにするための重しになる。


