終わった後に見える本性
さらに重要なのは、終わり方よりもむしろ「終わった後の姿勢」だ。特に気持ちよく終わらなかった関係において、その後どう振る舞うかが、その人や組織の本質を映し出す。一方的な非難や噂話に走るのではなく、たとえ内心では不満があっても、品位を保つ行動をすることで、長期的な信頼を育むことになる。
ビジネスにおいて、不快な経験や関係の決裂について多くを語らないのは、ある意味で自然な成り行きだ。経営者であれば尚更、自身の能力や手腕を疑われる原因を作りたくないし、トラブルがあったという噂を立てたくもない。そのため、多くは硬く口を閉ざす。「言わぬが花」「沈黙は金」なのだ。特に相手が理不尽かつ倫理観を欠いた行動をとった場合、同じ土俵に上がること自体が危険であり、自らも下げることとなる。自分と自社の身を守るためには、一歩離れ沈黙することが最善の策となることもある。
関係の終わり方には、その関係の本質が露呈する。建前と本音、丁寧さと軽視、誠実さと搾取。どれほど多くの言葉や資料、契約書が交わされていたとしても、終盤のわずかな言動の中に、その関係の"本性"が浮かび上がる。
しかし、そういった場合でも、何かをされた側は貴重な教訓を得ている。起こった事柄には必ず原因があり、自分側にもつけいられる隙や甘さがあったはずだ。被害者にならないこと、それが重要だ。そして同じことが二度と起こらないよう、気持ちが熱いうちに未来に向けた改善策を立て、できることを全て整えるのだ。そうして変革の時を経た頃には、かつてあなたの心を掻き乱していた相手の名前は、ただの無機質な文字列になっていることだろう。
興味深いのは、不誠実な行いをした企業や個人は、時間の経過とともに自然と落ちていくという事実だ。知る人ぞ知ることとして、そうした行いは業界内で静かに共有され、やがて一般にもその片鱗が見え始める。一方で、痛みを伴う終わり方をしても、それを糧に自らを改善し、同じ過ちを二度と繰り返さない姿勢を貫く者は、長い目で見れば必ず報われる。今日の競合が明日のパートナーになることもあるこの世界では、どんな終わり方をしたとしても、その後の姿勢こそが真の実力と人間性を物語るのだ。
