サイエンス

2025.06.09 18:00

セレブがハマる「名声」は麻薬か怪物か、心理学で読み解く「内なる世界の4つの段階」

KOTOIMAGES / Shutterstock

1. 「愛憎入り混じる」段階

シンガーソングライターのチャペル・ローンは、まさに今の世代が生んだ「イット・ガール(魅力的で有名な若い女性)」だ。そして、彼女が有名になるまでの道のりは、名声の「愛憎入り混じる」段階の典型例といえる。

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彼女は現時点で、時代を代表するスターの一人と言って間違いないが、その一方で、有名人の生活がすべて魅力的というわけではないことは、彼女自身も認めている。

先ごろのガーディアン紙とのインタビューで、彼女は名声について、「思春期を体験する」感覚に似ていると述べた。それまではまったく感じたことがなかった感情が生まれ、そうした感情に対処しなくてはならない、というのだ。

チャペル・ローンのように、瞬く間に名声を獲得したスターが、名声がもたらす結果に対処するのに苦労する理由は明白だろう。その一方で、有名になったことによって、自身の作品を多くの人に聞いてもらえる場が得られたことについては、彼女も深く感謝している。自由に自分を表現し、それで報酬も得られる──これはまさに、子どものころから思い描いていた夢の生活だと、彼女自身も認めている。

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ただし、名声はその人をむしばむこともある。プレッシャーや、他人からの詮索、プライバシー侵害といったものを、手に追えないと感じ、傷つくこともあるだろう。

若いセレブリティの多くは、キャリアの初期の生活について、「見せ物のポニー」のように連れ回される、と表現する。それは、有名人しか味わえない経験だ。激烈な競争環境のなかでセレブが生き残りたいと願うなら、公私の間に厳格な境界線を引くことが必須になる。

2. 「名声という麻薬に溺れる」段階

2009年に学術誌『Journal of Phenomenological Psychology』に掲載された、有名人の体験に関する論文の中で、面談調査の対象となったあるセレブリティはこう述べている。

「私は、人類に知られたほぼあらゆる薬物の中毒になった経験があるが、その中でもやみつきになる度合いが最も高いのは名声だった」

名声は、大半の人々にとっては想像もつかないようなライフスタイルへの扉を開く。我々が住む社会は、有名人をまるで王族のように扱うし、大げさな称賛や評価が絶え間なく注がれる生活からは、離れがたく感じるものだろう。

ポップカルチャーに関するニュースを見れば、人々の注目や地位を失いたくないと思うセレブリティが、評判を台なしにし、危険でさえある物事に溺れるケースがごまんとあるのがわかるだろう。彼らは、名声という麻薬を「もう一発」キメるためなら何でもしてしまうセレブたちだ。

2013年に『Personality and Individual Differences』に掲載された論文は、自分は有名でなくてはならないと感じる「必要性」と、心の弱さやナルシシズムという感情の間には相関関係があることを示している。人はしばしば、名声に伴って得られる力を欲しいと考え、これを手に入れるためには何でもする、という者も多い。名声はいわば心理的なドラッグであり、気を付けて扱わなければ、あらゆる薬物中毒と同様に、人を破滅させてしまうおそれすらあるのだ。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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