私たちが暮らす地球がある天の川銀河(銀河系)と、最も近傍の巨大銀河アンドロメダ銀河(M31)は、いつ衝突するのだろうか? これは天文に携わる者がよく聞かれる質問だ。天文学者はかねて、この2つの大型の渦巻銀河がやがて衝突・合体するという説を唱えてきた。そのときは約40億年後と予測されている。
ところが、天の川銀河とアンドロメダ銀河は衝突しないかもしれないとする新たな研究結果がこのほど発表され、この10年間信じられてきた理論が覆されようとしている。英科学誌ネイチャー・アストロノミーに6月2日付で掲載された論文によると、100億年後までのシミュレーションにおいて、この2つの銀河が衝突を回避する確率は50%に上ることがわかった。
アンドロメダ銀河へようこそ
アンドロメダ銀河は少なくとも1兆個の恒星からなり、地球から約250万光年先にある。宇宙の広さからみれば、非常に近い距離だ。一方、銀河系には約1000億~4000億個の恒星があるとされる。何せ私たちは天の川銀河の真っただ中にいるため、望遠鏡でそのすべてを正確に把握することはできていない。
アンドロメダ銀河が天の川銀河に向かって接近しているという知見は、宇宙の膨張を理解する上で核となるものだ。夜空にぼんやり光って見える、かつて「アンドロメダ星雲」と呼ばれていた天体が、実は「島宇宙」──すなわち銀河系の外にある別の銀河であることを1924年に突き止めた米国の天文学者エドウィン・ハッブルは、4年後の1929年に、あらゆる銀河が地球から遠ざかっていることを実証した。アルバート・アインシュタインの方程式が予測したとおり、宇宙は膨張していたのだ。
しかし、アンドロメダ銀河にはハッブルの唱えた法則(ハッブル・ルメートルの法則)が当てはまらない。アンドロメダ銀河と天の川銀河は、時速40万kmで互いに近づきつつある。



