新銀河「ミルコメダ」は形成されない?
アンドロメダ銀河は約40億光年後に地球の夜空を支配するだろう、というのが通説だ。約50億年後には銀河系がアンドロメダ銀河に飲み込まれ、新しい超巨大銀河「ミルコメダ(Milkomeda)」が形成されるといわれている。
これを否定する新たな研究結果を、フィンランドにあるヘルシンキ大学の研究チームが発表した。銀河系やアンドロメダ銀河が属する局所銀河群(Local Group)の他の天体、特に天の川銀河を周回するいくつかの矮小銀河の影響を考慮した重力モデルを用いてシミュレーションを行ったところ、天の川銀河の軌道は約50%の確率でアンドロメダ銀河を完全に逸れるとの結果が導き出されたのだ。
この研究では、欧州宇宙機関(ESA)の天体観測衛星ガイアと米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡から得られた最新の観測データに加え、近傍銀河の推定質量を見直した数値をシミュレーションに用いている。
伴銀河との出会い
天の川銀河は孤独な存在ではない。局所銀河群はアンドロメダ銀河やさんかく座銀河(M33)など、50個を超える銀河で構成されている。さらに、天の川銀河を周回する小マゼラン雲や大マゼラン雲といった伴銀河(衛星銀河)もある。NASAによると、さんかく座銀河の大きさは銀河系の半分ほどで、局所銀河群で3番目に大きい。
研究チームによれば、天の川銀河の軌道はこれら近傍にある小さな銀河の重力の影響を受けており、各銀河の質量データを更新したことで新しい結果が得られた。中でも、これまでの分析では考慮されていなかった大マゼラン雲の重力の影響を計算に含めたことが衝突確率の低下につながった可能性があるという。
また、天の川銀河は今後20億年以内に、つまりアンドロメダ銀河との衝突が予想されるより前に大マゼラン雲と合体する可能性があるとも論文は述べている。
すでに衝突は始まっているとの説も
アンドロメダ銀河をめぐっては、その動きが宇宙全体を理解するための基礎となっていることから数多くの研究が行われてきた。2019年には、アンドロメダ銀河がすでに数十億年かけて複数の小さな銀河を飲み込んでいたとの研究結果が報告された。
2023年には、天の川銀河とアンドロメダ銀河の間ですでに事実上の相互作用が始まっているとする論文が発表された。天の川銀河を取り巻くハロー(銀河ハロー)と呼ばれる領域にある古い星々の位置が、銀河系とアンドロメダ銀河とのほぼ中間点にあり、2つの銀河のハロー領域を満たしているガスはすでに混じりつつある可能性があるという。
何にせよ、40億年後に2つの銀河の衝突が実際に起こるかどうかは、地球人にとっていささか観念的な問題ではある。その頃には太陽は主成分の水素を使い果たし、赤色巨星へと膨張して地球の海を蒸発させ、もしかすると地球をすっかり飲み込んでしまっていることだろう。


