北米

2025.06.03 13:00

AIポルノ被害者の「損害賠償訴訟」を支援する法案、米議会で提出

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(Photo by Anna Moneymaker/Getty Images)

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(Photo by Anna Moneymaker/Getty Images)

トランプ米大統領は5月19日、ディープフェイクポルノやリベンジポルノなど、本人による合意なくオンライン上に公開された性的画像の削除をソーシャルメディア企業に義務付ける法案の「テイク・イット・ダウン法(Take It Down Act)」に署名した。この流れを後押しするために、こうした露骨な画像を作成・共有した者に対して被害者が訴訟を起こせるようにする「ディファイアンス法(DEFIANCE Act)」と呼ばれる法案が22日に議会に再提出された。

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非合意のポルノの被害者とサバイバーに向けた、正義を追求する法的権利

すでに成立したテイク・イット・ダウン法は、有効な削除依頼から48時間以内にプラットフォームに画像の削除を義務づけるもので、違反者には罰金や最長3年の禁錮刑が科される可能性がある。また、対応を怠ったプラットフォームは連邦取引委員会(FTC)から制裁を受ける場合がある。

今回再提出されたディファイアンス法は、テイク・イット・ダウン法の足りない部分を補い、抜け穴をふさぐもので、画像に写っている当人が損害賠償訴訟を起こせるようにする。「私たちは、非合意のディープフェイクポルノの被害者、また被害に遭い精神的苦痛や社会的困難を克服しようと奮闘しているサバイバーに、正義を追求する法的権利を与えるために、この法案を再提出する」と、米民主党のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員は声明で述べた。

ディファイアンス法は、テイク・イット・ダウン法と同様に超党派の支持を得ており、昨年夏に上院を全会一致で通過したが、下院での審議が進まず1月に廃案になっていた。この法案が署名されれば、被害者はディープフェイクの露骨な画像を作成・配布・勧誘・公開した加害者に対して民事訴訟を起こせるようになる。

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ディープフェイクポルノがフェイク動画の98%を占め、そのうち99%が女性対象

現在では人工知能(AI)アプリを使えば、他人の写真をもとに非合意でリアルなヌード画像を簡単に生成できる。こうしたディープフェイクに加えて、実際の露骨な写真も許可なく共有されることがある。サイバーセキュリティ企業DeepTraceが2019年に発表したレポートによると、ネット上のディープフェイク動画の96%が非合意のポルノ的な内容だった。別のサイバーセキュリティ企業Security Heroの2023年の調査では、ディープフェイクポルノがネット上のディープフェイク動画の98%を占め、そのうち99%が女性を対象にしていた。

民事上の救済措置は不可欠

今回の新たな法案は、被害者が露骨な画像によって被った損害に対して補償金を受けられるようにするものだ。「民事上の救済措置は、被害者の手に直接力を与えるものとして不可欠だ。刑事訴訟とは異なり、民事訴訟は検察官の判断に依存せず、勝訴もしやすいため、よりアクセスしやすい正義への道となる」と、性的暴力防止協会(Sexual Violence Prevention Association)創設者のオムニ・ミランダ・マルトーンはコメントした。この法案が成立すれば、被害者は仕事を失ったことや、治療や身辺警備などから生じた費用について、金銭的な補償を求めることが可能になる。

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編集=上田裕資

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