一方、小澤氏には気にかけていることがある。各国を食べ歩いているフラットな目から見ても日本の食文化はトップレベルであることは間違いない。しかし、おもてなしの国でもあるはずなのに、近年ホスピタリティの質が低下しているというのだ。シェフが作った作品をディレクションできる人が減ってきていると。
現在51歳の小澤氏が20代、30代のころには、フランス料理店の数も限られ、名店と言われる店には必ず名サービスマンがいた。
例えば、1994年にタイユバン・ロブション(ガストロノミー ジョエル・ロブション)がオープンし、素晴らしいサービス陣が料理に華を添えてきた歴史がある。しかし、そこから出た若林英司氏、永井利幸氏など、日本のサービス業界を牽引してきたサービスやソムリエを継ぐ人材が不足しているというのである。
実際、ソムリエの称号を持つ人は4万人弱に及ぶが、そのうち職業人として残っているのは本当に少数であるという。理由は労働環境にもあるのかもしれない。就労時間が長く、給料が安い。未だにオーナーシェフのなかには、若い頃の辛い思いを改善しないまま、負の連鎖を続けている人も少なくない。
そこをクローニーは断ち切りたいのだという。週休2日、一般企業並みの所得を確保して、レストランという場所の楽しさを教えられる環境を作っていく。小澤氏は、「お客さまも自分もハッピーになれるこんなに素晴らしい仕事はないのですから」と、そのモデルケースになることに務めている。
またレストランにおいては、5~6年働いて一通りのことができるようになったときに、オーナーソムリエとシェフがいる限り、その上のポジションにはいけない。かといって、独立するのも容易ではない。クローニーでは、支店を作り、相応のポジションを与えることでこの課題に向き合っている。
その実例として、現在、軽井沢に花屋と協業してレストランスペースを作り、数年働いた料理人とサービスをスタッフとして送り込んでいる。また、この秋には台湾の台北に店をあけ、同様の仕組みでシェフを任せる予定でいる。
海外を経験して、海外に店を出すもよし、日本に戻るもよし。グローバルな時代に海外での経験をしているか否かの差は大きい。そんなことも含め、レストラン業界の魅力を広く知らしめるプラットフォームになりたいのだという。
「いわば、現場での小澤学校とでもいうのでしょうか。人を育てるシステムを作り、なんとかこの業界をもう一度盛り上げたい。それを実現することが、ソムリエとして、いえ、サービスマンとしての人生の目標ですね」


