2025.06.01 11:00

フィアットが「ラストワンマイル問題」を解決する電動3輪車「トリス」発表 

フィアット・プロフェッショナルは、配送の「ラストワンマイル」に適した電動3輪の商用車「トリス」を市場に投入し、これまでピアジオが担ってきた役目を引き継ぐ。(Fiat Professional)

フィアット・プロフェッショナルは、配送の「ラストワンマイル」に適した電動3輪の商用車「トリス」を市場に投入し、これまでピアジオが担ってきた役目を引き継ぐ。(Fiat Professional)

フィアットの商用車部門フィアット・プロフェッショナルは、イタリアの象徴的車両を踏襲する電動3輪車「TRIS(トリス)」を発表した。

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まずはアフリカや中東市場に導入されるトリスだが、明らかにそのデザインの起源は、スクーター「Vespa(ベスパ)」で有名なピアジオ社が製造販売する3輪トラック「Ape」(「アペ」と発音し、イタリア語で「ミツバチ」という意味。ちなみに「Vespa」は「スズメバチ」)の長い歴史を遡る。

トリスは、イタリアにあるフィアットのデザインスタジオ「チェントロ・スティレ」によってデザインされた。フィアットによる、小さくて小回りの効く商用車を活用することで、配送の「ラストワンマイル問題(物流業界で消費者の手元に商品が届くまでの最後の短い配送区間に生じる問題)」を解決しようとする試みによって生み出されたプロダクトであり、1948年の誕生から現在も使われているピアジオ・アペの役割を継承するものだ。

「アペ」は、スクーター「ベスパ」で知られるピアジオが1948年から製造している小型3輪自動車。(Piaggio)
「アペ」は、スクーター「ベスパ」で知られるピアジオが1948年から製造している小型3輪自動車(Piaggio)

現在もアペでは欧州向けに、ユーロ4排出ガス規定に対応した排気量50ccの2ストロークガソリンエンジンを搭載する「アペ50」が販売されている。さらに、インドでは排気量のより大きなガソリン、ディーゼル、天然ガスを燃料とする様々なエンジンを搭載し、商用トラック以外にも後部座席を備えた乗用モデルなどが販売されている。

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カルト的な人気を誇るピアジオ・アペは、ホンダやトライアンフの高出力エンジンを移植して魔改造されたレース車両さえもがマニアによって製作されている。

ピアジオ・アペは、中世から遺るイタリアの狭い街路を走るために設計された。(Shutterstock)
ピアジオ・アペは、中世から遺るイタリアの狭い街路を走るために設計された(Shutterstock.com)

フィアット・トリスがピアジオ・アペと異なるのは、メーカーの発表によると排気を一切出さない電動車のみになるという点だ。

フィアットによるとトリスはモロッコで製造され、アフリカと中東市場で「手頃な価格」で発売される予定だが、欧州も「次の市場となる」可能性があると、フィアットの最高経営責任者(CEO)でステランティスのグローバル最高マーケティング責任者(CMO)を務めるオリビエ・フランシスは語っている。

トリスは全長3.17mという小さな車体に約2.25平方メートルの荷台を備え、最小回転半径は3.05m(ちなみに日本の軽トラは3.6m)。容量6.9kWhのリチウムイオン電池を搭載し、航続距離(一度の満充電で走行可能な距離)はWMTC(世界統一二輪車排出ガス試験手順)基準で90kmになるという。外部充電器が不要な220Vプラグのスマート充電システムを内蔵しており、家庭用コンセントでバッテリー残量0%から80%まで3.5時間、100%まで4時間40分で充電できる。48Vの電気モーターは最高出力9kW(約12ps)と最大トルク45Nmを発生。最高速度は45km/hと発表されている。

forbes.com 原文

翻訳=日下部博一

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