宇宙

2025.05.24 13:00

太陽系「第9惑星」候補か、台湾チームが日米の衛星画像から手がかり発見 今後の展望は?

太陽系外縁部に存在する可能性が示唆されている「第9惑星」の想像図。太陽の周囲に光の輪として海王星の軌道が描かれている(ESO/Tom Ruen/nagualdesign)

「第9惑星」の有力候補発見?

台湾・国立清華大学天文研究所の藩玉龍(Terry Long Phan)と後藤友嗣教授らの研究チームは、米航空宇宙局(NASA)の赤外線天文衛星「IRAS」(運用期間:1983~84年)と日本の天文衛星「あかり」同2006~11年)による遠赤外線全天探査のアーカイブデータ分析から、「第9惑星」の候補天体を1つ発見したと述べている。

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日本の赤外線天文衛星「あかり(ASTRO-F)」(ISAS/JAXA)
日本の赤外線天文衛星「あかり(ASTRO-F)」(ISAS/JAXA)

赤外線観測は、光学観測では捉えられない暗い天体でも検出できる。2つの赤外線衛星の観測時期には23年間の隔たりがあり、これは軌道上をゆっくり移動している候補天体の軌道運動を確認するのに十分な期間だとみなされた。

査読前論文によると、研究チームは「IRAS」のデータセットの中に「あかり」のデータセットでは確認できない天体を1つ、「あかり」のデータセットの中に「IRAS」のデータセットでは確認できない天体を1つ発見した。極めて重要なことに、これらは「第9惑星」が軌道上を移動したと考えられる位置関係にあった。

ただ、「あかり」と「IRAS」のデータから検出できただけでは候補天体の完全な軌道を決定するには不十分であり、追跡観測が必要だと研究チームは指摘している。

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この「第9惑星」は本物か

「第9惑星」の探索に取り組んでいる天文学者たちは、有力候補の登場に興奮しつつも、懐疑的な見方を崩してはいない。米カリフォルニア工科大学のマイケル・ブラウン教授(惑星天文学)は今週、天文情報サイトEarthSkyのYouTubeチャンネルで「すばらしい論文だ。正しい手法だ」と評価しつつ、天体の位置関係が一致したデータのペアが1つ見つかっただけでは未知の惑星の存在を示す証拠とはいえないとの見解を示した。

ブラウンは2016年に同僚のコンスタンティン・バティギンと共同で、太陽系外縁部にある6つの小天体の軌道が非常に似通っている理由を説明しうる存在として「第9惑星」の仮説を提唱した当人である。

「ここで明らかな疑問は、『それは実在するのか』ということだ。この問いに答えるのは難しい」とブラウンは述べた。「(一致する)データポイントが2つあるというだけでは、信じることはできない。3つめ、4つめ、さらにはおそらく5つめ、6つめ(のデータの一致)も見なければならない」

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翻訳・編集=荻原藤緒

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