食&酒

2025.05.23 14:15

高田馬場のガチ中華は中国人留学生の学食か 人気の店を紹介

高田馬場の四川料理店「小米椒 江湖酒舍」のランチタイムは中国人留学生であふれている

これからわかるのは、オーナーや調理人がおそらく南方か沿海地方の人なのだろうということだ。また、いまどきの若い中国人が好む麻辣とは無縁の料理がほとんどで、中国南方出身のJさんらしいチョイスだと思った。

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筆者はこの「小食堂」で紅焼肉定食(1180円)を頼んだが、さすがは留学生の街のメニューらしくボリュームたっぷりだった。

ところが、この店について東京ディープチャイナのSNSに投稿したところ、「いまの時代は高田馬場でもランチは1000円以上するのかもしれないが、最近の留学生は苦学生があまり多くないのかな? ちょっと高めに感じました」というコメントがいくつか寄せられた。

確かに、そうなのだ。今年2月、筆者がトークイベントでご一緒したジャーナリストの舛友雄大さんの著書『潤日(ルンリィー) 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』という本の刊行以降、メディアでこのテーマを扱うことが増えている。

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高田馬場にいる中国人留学生がみんな富裕層であるわけはないのだが、たとえ中間層の子弟だとしても、日本の一般の学生よりは懐が豊かなのは間違いなさそうだ。

彼らの多くはほとんど自炊をしないと聞く。フードデリバリーもよく使う。そんな彼らのおかげで、ロンドン発の在外中国人向けのデリバリーサービスが日本にも進出したことを、以前書いたことがある。これは高田馬場で起きていることは、世界各地でも起きていることの証左である。

ガチ中華は中国人留学生の学食

中国人留学生向けのランチでにぎわう店の1つが、湖北省出身の大学院生Mさんが教えてくれた四川料理店「小米椒 江湖酒舍」だ。平日のお昼時に店を訪ねると、中国の留学生や進学塾生であふれかえっていた。

「小米椒 江湖酒舍」はJR高田馬場駅から徒歩1分のさかえ通りにある
「小米椒 江湖酒舍」はJR高田馬場駅から徒歩1分のさかえ通りにある

Mさんは日本の大学院に入学する前、高田馬場の日本語学校に通っていて、よくこの店に来たのだという。確かに、10代と思われる日本語学校生らしき若者もいた。ランチタイムは行列ができるほどの人気なので、その時間帯のみ、テーブル掛けでも相席でやっているようだ。

この店の日替わりランチメニューは一応1000円以内に抑えてあり、量もたっぷりでリーズナブルといえる。しかもご飯にスープ、中国のコンビニでよく見かける茶葉や醤油で煮込んだ煮タマゴの茶叶蛋とデザートも付いている。

この日の日替わりランチの1つは、鴨血(ヤーシュエ)というアヒルの血を煮凝りにした四川の定番食材入りの麻辣煮込みである毛血旺の定食だ。見るからに辛そうな真っ赤なスープで、本格派の四川料理である。

「小米椒 江湖酒舍」の毛血旺定食(1180円)。煮タマゴも含め、全部はとても食べきれなかった
「小米椒 江湖酒舍」の毛血旺定食(1180円)。煮タマゴも含め、全部はとても食べきれなかった

店の自慢は四川省や湖南省でよく食べられている干し肉の腊肉(ラーロウ)と干し豆腐の炒め(豆干炒腊肉)だ。四川出身のシェフのつくる自家製腊肉なので、料金は1480円とやや高めで丸の内のランチ価格に近いかもしれないが、中国人留学生には人気だそうだ。

「小米椒 江湖酒舍」の腊肉と干し豆腐の炒め定食(1480円)
「小米椒 江湖酒舍」の腊肉と干し豆腐の炒め定食(1480円)

オーナーの汪旗さんは港町の大連出身で、筆者と同じように四川料理を食べると顔から汗がすぐ噴き出してしまうような人なのだが、「高田馬場で中国人留学生を相手にしようとしたら、四川料理は外せない。学生さんにおなか一杯食べてもらおうと、ご飯はおかわり自由」と話す。

ごった返した店内で若い男子学生たちが何度も立ち上がって、おかわりしている光景は微笑ましかった。高田馬場に詳しいある人物が「高田馬場のガチ中華は中国人留学生の学食だ」と語っていたのは本当だった。

ところが、汪さんはこんなことも漏らす。「昼間はこの調子で繁盛しているのですが、夜はそれほどでもないんです。最近の若い中国人はお酒を飲まないせい」だという。これもまた最近の中国人留学生のライフスタイルを特徴づけるエピソードといえるかもしれない。

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文・写真=中村正人

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