宇宙の最終状態がどうなるのか、その運命は物質と暗黒エネルギーのバランスによって決まる。
宇宙が非常に冷たくなり、エネルギーが不足して一切の活動が止まったときに終焉を迎えるというのが、古くから唱えられてきた「熱的死」説だ。しかし、マックが著書の中で紹介して述いるように、宇宙の終わり方には他にもさまざまな仮説がある。
・ビッグクランチ:宇宙自身の重力によって宇宙が収縮して潰れ、ビッグバンと同じ高密度の「点」に収束して消えてしまう
・ビッグリップ:宇宙の膨張が急激に加速して、宇宙そのものが引き裂かれてしまう
・ビッグバウンス:宇宙は収縮して崩壊した後、再び膨張するプロセスを何度も繰り返す(ビッグクランチとビッグバンの反復が起こる)
・偽真空崩壊:物理法則において量子的変化が起こり、今存在しているものがすべて崩壊してしまう
暗黒エネルギーがもたらす「第6のシナリオ」?
宇宙の終焉をめぐっては、新たな第6のシナリオが浮上するかもしれない。米アリゾナ州のキットピーク国立天文台にある暗黒エネルギー分光装置(DESI)では、宇宙の加速膨張を促進する謎の力である暗黒エネルギーの影響を測定している。
3年間にわたるDESIを用いた観測で、約1500万個の銀河とクエーサー(銀河の中心にある超高輝度の中心核)を調査し、これまでで最大の宇宙の3D地図がこのほど作成された。このデータは、暗黒エネルギーが時間変化しない一定不変の存在ではなく、進化していることを示唆している。
これは現在の標準的な宇宙論モデルに異議を唱えるものであり、宇宙の未来が予測不可能であることを示唆している。DESIの共同研究者で、英ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)のオファー・ラハブ教授(物理学・天文学)は、今年3月の発表で次のように述べている。
「暗黒エネルギーが一定であれば、宇宙は永遠に加速膨張を続けるだろ。もし時間とともに進化するのであれば、宇宙の運命はより不確実なものになる」


