海と空で超絶アクションを展開
ストーリーだけではなく、もちろんトム・クルーズが自身の身体を駆使した想像を絶するアクションも、最新作「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」では大きな見どころとなっている。
前作の「ミッション:インポッシブル/デッド・レコニング PART ONE」では、得意のバイクによる崖からのダイビングや傾斜したオリエント急行の車内でのアクションシーンなどに、手に汗握らされたが、個人的には狭いローマの街路でのカーチェイスもかなりエキサイティングだった。
今回の「ファイナル・レコニング」でトム演じるイーサン・ハントが闘いを挑むのは、人類を抹殺しようと暴走を始めた超AIのエンティティだ。姿を見せない「敵」だけに、どんなアクションシーンが展開されるのか期待していた。
この作品でトムが身体を張って挑戦するアクションは陸と海と空に及ぶ。特にベーリング海の底に沈んだという設定の潜水艦を探索するシーンでは、トムは水中に1時間15分も潜り沈黙のアクションを展開した。その間、スタッフは彼に低酸素症が起きないかと案じていたという。
このシーンを撮影するために大型の水槽を探したが見つからず、深さ32フィート、直径108フィート、容量900リットルのヨーロッパでも最大規模となる巨大な水槽を自前でつくり上げた。潜水艦や撮影用のジンバルなども用意され、結局、撮影までには2年半がかけられたという。
また空に関しては、宣伝ビジュアルでも使用されているが、飛行中の飛行機から別の機に乗り移り、翼を伝いながら操縦席に乗り組み敵と闘うというアクロバティックな離れ技を披露している。観ていてもかなりスリリングなシーンだ。トムは次のように語っている。
「長年の間、僕は空中でのアクションをたくさんこなしてきましたが、今回はさらに高いレベルを要求されました。こういうことをやってみせるためには、超えてはいけない境界を超えないようなスキルを築くため、1歩ずつ進んでいかなければなりません。危険ですが、すごく楽しい。そして、見ていて興奮します」
まさにトムならではの発言だ。撮影は南アフリカで行われ、緑が美しい全長26キロメートルのブライド・リバー・キャニオンや世界で2番目の落差(947メートル)を誇るツゲラ滝もあるドラケンスバーグ山脈でも行われ、そこでは飛行機の翼の上を歩くシーンが撮られたという。
これらの飛行機でのアクションシーンは、思わずいったいどのように撮影されたのかと想像してしまうほど、他に比べるものがない超スペクタクルな場面となっている。
過去作を巧みに織り込みながら熟考が重ねられたストーリー展開に、これらの超絶なアクションシーンが加わることで、「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」は、まさに「ファイナル」にふさわしい没入感マックスの作品となっている。シリーズ全作でプロデューサーを務めてきたトムも次のように語っている。
「僕は観客に参加してもらえるような映画をつくってきました。観客には、ただのんびり座っているのではなく、作品に没頭してほしいのです。僕も、観客として映画を観ているとき、没頭したいですから。この映画は、そういう没入感を提供できると思います」
シリーズ第1作目の公開時、トム・クルーズはまだ34歳だった。「ファイナル」と銘打たれた最新作で彼は62歳を迎えた。今後の去就についてはさまざま取り沙汰されているが、最新作を観た個人的な感想としては、トムはまだこのシリーズを続けようとしているようにも思えるし、ぜひ続けて欲しいと願っている。


