トランプ米大統領は5月20日、弾道ミサイルや極超音速兵器、先進型巡航ミサイルなどの脅威から米国を守るための「ゴールデンドーム」と呼ばれるミサイル防衛構想の詳細を発表した。このプロジェクトは、数千億ドル(数兆円)規模の費用が見込まれるもので、米国が宇宙に配備する初の兵器となる見通しだ。
大統領は、自身の政権がゴールデンドームの基本構想を正式に決定したと語り、このシステムが自らの任期終了前に運用を開始すると表明した。このシステムは、既存のミサイル防衛網と統合され、極超音速ミサイルや弾道ミサイル、巡航ミサイルの迎撃を可能にするという。
ゴールデンドームとは?
ゴールデンドームは、陸・海・宇宙をまたぐミサイル防衛システムで、米国全土を防護することを目的としている。このシステムは、ミサイルを複数の段階において検知、追跡、迎撃することが可能で、発射される前のミサイルを破壊できる可能性もある。ピート・ヘグセス国防長官は記者団に対し、ゴールデン・ドームが「階層型の防衛システム」であり、「ある段階で取り逃がしても、次の段階で捕らえることが可能だ」と説明した。
トランプは20日、このプロジェクトの費用が1750億ドル(約25兆円)になると述べたが、議会予算局(CBO)の試算によれば、5000億ドル(約72.5兆円)を超えると見込まれている。大統領は、現在議会に提出中の税制法案の中で、このプログラムに250億ドル(約3.6兆円)の初期の費用の割り当てを求めている。AP通信によれば、このプロジェクトのコストの大部分は、衛星と迎撃装置関連の費用という。
トランプは、この計画の責任者に宇宙軍のマイケル・ゲトライン大将を任命した。空軍で30年にわたり勤務した後に2021年に宇宙軍に加わった彼は、ミサイル防衛と宇宙システムの専門家とされている。
軍関係者は、以前から中国およびロシアのミサイル能力に警鐘を鳴らしており、ゲトライン大将は「我々は毎年、膨大な数の脅威が出現するのを目の当たりにしている。2年から4年も予算を待たなければならない状況では、そうした脅威への対応は非常に困難だ」と述べていた。
一方、空軍長官のトロイ・マインクは今週、議会に対してゴールデンドームは「まだ概念段階にある」と発言していた。
トランプ政権のこのプロジェクトは、1983年にレーガン元大統領が打ち出したミサイル防衛構想を想起させる。「スターウォーズ計画」とも呼ばれたこの計画は、地上および宇宙に対ミサイル兵器を配備して米国を防衛するものだったが、巨額のコストや実現性の乏しさを指摘された結果、実現には至らなかった。



