経営・戦略

2025.05.22 15:30

原子力発電でAI時代を乗り切る 未来へ向けたアマゾンの大きな賭け

アマゾン ウェブ サービス(AWS)のマット・ガーマンCEO(Noah Berger / Getty Images for Amazon Web Services)

アマゾン ウェブ サービス(AWS)のマット・ガーマンCEO(Noah Berger / Getty Images for Amazon Web Services)

世界では、より進んだ人工知能(AI)が次と生み出されているが、AIを活用するのに欠かせない電力が、十分供給されなくなるかもしれない。

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アマゾンは今、壮大なデータセンター拡大計画を推進するため、原子力発電への大型投資を行っている。投資額は米国の3州だけで520億ドルを超える。

2024年10月に同社は、時価総額490億ドルの巨大エネルギー企業ドミニオン・エナジーと、バージニア州で小型モジュール原子炉(SMR)発電施設の開発に関する合意書に署名したと発表した。SMRは先進的な小型原子炉の一種で、サイズは従来の原子力発電施設の10%未満だ。

アマゾンはまた、公益電気事業者のエナジー・ノースウェストとも共同でワシントン州での複数のSMRの開発および配備に出資する計画だと発表。さらには、エナジー・ノースウェストとの提携の一環として、SMR開発会社Xエナジーとも別途に合意書を締結し、同社への5億ドルの投資を主導している。Xエナジーはメリーランド州の新興企業で、09年にビリオネアで連続起業家のキャム・ガファリアンによって創業された。

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アマゾンとXエナジーはこの取引を通じ、39年までに米国各地で総発電容量5GW(ギガワット)を超える複数の発電施設を新たに稼働させる予定だ。中規模都市の電力需要を優にまかなえる規模のこの計画によって、人工知能(AI)の急増する電力ニーズに対応しようとしているのだ。

アマゾンだけでなく、マイクロソフトやグーグルといった大手データセンター事業者も、急増する電力ニーズへの対応策としてのSMRに期待を寄せている。SMRは従来の原子力発電施設より短期間、低コストでの建設が可能であり、カーボンフリーでもある。また、風力発電や太陽光発電とは違って供給が安定しており、24時間体制で稼働できる。米国エネルギー省によると、米国内の原子力発電容量は24年現在の100GWから50年までに3倍の300GWに拡大する可能性がある。脱炭素と常時発電の両方の需要を満たすためだ。

「世界のエネルギー需要の拡大において、原子力は素晴らしい選択肢です」

アマゾン ウェブ サービス(AWS)の最高経営責任者(CEO)マット・ガーマンは、ビデオ通話でそう語る。ガーマンは、より多くのエネルギーを利用可能にする必要があり、そのための「最も有望な」新技術がSMRであると述べる。

ガーマンは、AWSが需要に応じてデータセンター事業を拡大し続け、その一方で40年までに事業全体の温室効果ガス排出量を実質ゼロ化する目標を達成するうえで、原子力がひとつの重要な要素になると考えている。AWSが必要とする電力の何割が原子力発電によって供給されるかという目標については明言を避けたが、40年までには「重要な発電源になる」と期待しているという。

「私たちは、原子力発電は、エネルギー供給の拡大において費用対効果の高い方法だと考えています」(ガーマン)

しかし、原子力発電は温室効果ガスを放出しない一方で、放射性廃棄物の管理を必要とする。また、SMR開発の議論が高まっているものの、米国ではまだSMR発電施設は1基も開設されておらず、費用や実現可能性の疑問は解消されないままだ。

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文=エイミー・フェルドマン 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

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