経営・戦略

2025.05.22 15:30

原子力発電でAI時代を乗り切る 未来へ向けたアマゾンの大きな賭け

アマゾン ウェブ サービス(AWS)のマット・ガーマンCEO(Noah Berger / Getty Images for Amazon Web Services)

技術が進歩するにつれ、SMR開発に取り組む新興企業はいくつも誕生している。Xエナジーをはじめ、塩を使ってエネルギーを貯蔵する新しい種類のナトリウム炉を開発しているビル・ゲイツのテラパワーや、時価総額21億ドルの上場SMR開発企業ニュースケールなどだ。

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Xエナジーのクレイ・セルCEOによれば、初のSMRプロジェクトとなる化学メーカー大手ダウのために開発されるテキサスのSMRは、20年代の終わりごろに稼働を開始する見込みで、アマゾンのSMRプロジェクトはそれに続いて「可能な限り迅速に」動き出すという。セルは、35年にはXエナジーの数十のSMRプロジェクトが展開されているはずであり、一部は完成済みで、一部は建設中あるいは許可申請の段階となっているはずだと予想する。同社のXe-100原子炉は80MWの電力を生産するが、ワシントン州でのSMRプロジェクトと同様に、配備の際には1カ所に複数の小型原子炉が設置される可能性もある。
 
こうしたSMRプロジェクトを建設するには長い期間がかかるが、原因の一端は原子炉建設に伴う規制にある。米国原子力規制委員会(NRC)は23年1月に初のSMR設計を承認した。Xエナジーも現在、この承認プロセスに取り組んでいるが、NRCが24年1月に初期評価を終え、承認プロセスを進めるうえで障害はないと結論付けたと発表している。

「最初のプロジェクトがうまくいけば、需要は無限大になるに決まっています」(セル)

今、SMRの開発企業に資金が集まっているが、そうしたポテンシャルを見込んでのことなのだ。

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「100%クリーンエネルギー」を目指して

AWSの原子力発電への大型投資を構成するもうひとつの要素は、ワシントン州の公益事業会社、エナジー・ノースウェストとの提携だ。同社はXエナジーのSMR設計を使用し、ワシントン州リッチランドにある原子力発電施設、コロンビア発電所の近くにSMRの建設を計画している。エネルギーサービスと開発担当バイスプレジデントのグレッグ・カレンによると、エナジー・ノースウェストが新興企業のXエナジーと協業を始めたのは20年のことで、ワシントン州の100%クリーンエネルギーを義務づける法案の成立を受けてのことだった。同法は、45年までに州内の電力を100%クリーンエネルギーで提供することを明記している。

「SMRは私たちに多くのチャンスをもたらしてくれると考えています」(カレン)

彼は、ワシントン州のSMRプロジェクトが30年代初頭には運転を開始すると見込んでいる。エナジー・ノースウェストとの合意の一環として、アマゾンは合計320MWを生産する最初の4基のSMRから電力を購入する権利をもつ。そしてエナジー・ノースウェストには、追加で最大8基のSMRを建設する選択肢があり、その場合の総発電容量は最大960MWになる。

アマゾンがXエナジーと結んだ取引に基づくと、両社は今後15年間で合計5GWの発電施設を開発する見通しで、エナジー・ノースウェストのプロジェクトもそのひとつだ。XエナジーのセルCEOによると、この規模のエネルギーを生産するために4~5カ所で発電施設を開発する可能性があり、例えばバージニア州やペンシルベニア州など、米国内のデータセンター密集地域に設置されることになるという。

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文=エイミー・フェルドマン 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

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