女性向けファッション界隈では、とりわけ1865年から1890年頃までの「金ぴか時代(Gilded Age)」と1900年代はじめに、贅沢で派手な装飾が施された帽子が流行した。そうした帽子に使われたのが、鳥の羽根や花などのエキゾチックな装飾素材だ。鳥を丸ごと飾った帽子もあった。

婦人帽の一流デザイナーだったキャロライン・ルブーやリリー・ダッシェが一躍有名となった。そうしたデザイナーが手掛けた帽子はステータスの象徴であり、洗練さの証しとみなされた。とりわけ裕福なエリート階級の人気を呼んだのが、豪華な羽根飾りのついた帽子だった。
帽子職人は、小さな羽根だけでなく、シロサギやアオサギ、ダチョウといった大型鳥類の羽根も飾りに取り入れていた。そうした当時のファッショントレンドによって、鳥の羽根には際限ない需要が生まれ、結果的には鳥にとっては破壊的な市場が誕生した。
やがて、鳥類学者や自然保護活動家、自然主義者が、多種多様な種類の鳥が減少し始めていることに気づいた。そうした鳥の多くは、高まる需要を満たすために大量に捕獲されていたのだ。
例えば、米国南東部に生息していたカロライナインコは、こうした事態で途方もない被害を受け、最終的には絶滅に追い込まれてしまった。カロライナインコの色鮮やかな羽根が帽子飾りとして人気を博したため、大規模な狩猟や捕獲が行われたのだ。カロライナインコの個体数は、20世紀初頭に急減した。

こうした鳥の多くは、繁殖期になると、羽根飾りのために殺された。繁殖期は、鳥たちが集まり、羽根がいっそう鮮やかになるからだ。
婦人帽子業界によって鳥が乱獲され殺処分されたのを機に、野生動物の保護保全の必要性についての意識が高まった。そして、環境的な危機が拡大した結果、野鳥保護に取り組む全米オーデュボン協会の前身が設立され、羽根を目的とした狩猟の規制や、鳥類個体群の保護に取り組むようになった。
20世紀には、婦人帽子業界の隆盛と、それが鳥類に与えた破壊的な影響をきっかけに、法的ならびに社会的に重大な変化が徐々に進んでいった。ファッション業界が鳥類の個体群破壊に加担したことに対して、市民から激しい抗議の声が上がった結果、1918年には米国渡り鳥保護条約(MBTA)が制定された。鳥類を、搾取と狩猟から保護することを目的とした条約だ。
これは、野生動物保護の歴史において極めて重要な瞬間で、責任あるファッションと、環境責任の両面における転換点となった。
やがて、羽根飾り付き帽子の人気は衰えを見せ始めたが、この流行が与えた影響は消えることなく残った。取り返しのつかないダメージを受けたカロライナインコは、1918年に公式に絶滅した(オハイオ州の動物園で飼育されていた最後の1羽が死亡した)。移り変わりの激しいファッショントレンドの犠牲となったのだ。


