世界で最も強力なパスポート
英コンサルティング会社ヘンリー・アンド・パートナーズによる2025年版パスポートランキングでは、シンガポールが「世界最強のパスポート」に選ばれたが、NPIではアイルランドが1位となった。過去のNPIランキングを振り返ってみると、アイルランドがスイスと長らく首位争いを繰り広げてきたことは明らかだ。
両国は、国際社会での認識、二重国籍、個人の自由の指数で一貫して上位に君臨しており、ビザなし渡航や国民への課税でも高い評価を得ている。今年はアイルランドの外国渡航のしやすさによる評価がわずかに上昇したことから、同国は昨年首位だったスイスを逆転した。
アイルランド国籍には、そのほかにも利点がある。起業家に優しい税制や外国旅行のしやすさ、迅速な市民権取得手続きもさることながら、アイルランドのパスポート保持者は欧州連合(EU)域内だけでなく、隣国の英国でも居住し労働する権利があるため、英国のEU離脱(ブレグジット)後の現在は他のEU加盟国と比較しても特に有利となっている。
スイスと並んで2位を占めたのはギリシャで、昨年から4つ順位を上げた。この理由について、ノマドキャピタリストは「EUの移民、投資、税制の議論で、ギリシャの存在感が高まっていることに加え、(2024年後半に導入された)税制優遇措置の拡大と合理化」によって「この1年間で国際的に同国の魅力が著しく高まった」と説明した。
ギリシャの順位が急上昇したことによりポルトガルは4位に後退したが、太陽が降り注ぐイベリア半島に位置する同国の総合得点も上昇した。ポルトガルは素晴らしい天候に加え、同国のパスポート保持者は南アフリカなどの国にビザなしで渡航でき、欧州で最も外国人居住者に優しい税制を持つ国の1つであることから、世界的に人気が高まっている。
5位はマルタで、昨年の14位から大きく順位を上げた。これは、非居住者税制への関心が再燃する中、国民への課税の得点が大きく上昇したことによるものだ。マルタは英語が公用語であることや、地中海地方の生活様式の魅力といった利点に加え、税負担も重くない。
マルタと並んでトップ5入りしたのはイタリアで、政府が均一税制を拡大し、わかりやすい税制を求める富裕層や退職者の移住の機会が増したことから順位を上げた。欧州の他の多くの国と比べて生活費が比較的安いほか、豊かな文化や質の高い生活、そしてもちろん食事がおいしいことなど、イタリアには他にも多くの魅力がある。