気候・環境

2025.05.15 11:30

不安定になるばかりの食料生産、人間の食はこれから植物性食品が主体になる

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英オックスフォード大学マーティン・スクールのポール・ベーレンス(英学士院グローバル教授)は「この移行はいずれにせよ起こることだ」と言う。ベーレンスは食料の生産から消費までのほぼすべての活動を網羅する食料システムを研究している。貿易を通じた生産者と消費者の相互作用、そして構造改革による世界の食料サプライチェーンの回復力向上のモデル化を専門としている。

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ベーレンスは4月に開催されたオックスフォード大学のLEAPカンファレンスで講演し、世界中の食料システムにますます負荷がかかっていると説いた。農業は温室効果ガスの排出や生物多様性の喪失、窒素による環境汚染など、いくつかの環境破壊の主要因となっている。同時に、食料生産は異常気象や経済的な打撃、リソースの制約の影響をますます受けている。

こうした負荷が累積し続けていることを示す証拠は増える一方だ。今年初め、オーストラリアで洪水が発生し、英国を上回る面積が冠水した。同国の牛のほぼ半分が生まれるクイーンズランド州では家畜が多数犠牲となった。

こうした例はより広範なパターンを示している。国際通貨基金(IMF)が発表した、気候変動による干ばつによって引き起こされる食料価格のインフレを警告する研究報告書や、科学誌『Communications Earth & Environment(コミュニケーションズ・アース・アンド・エンバイロメント)』に掲載された世界の気温上昇の下で食料価格がどうなるかを予想している研究などの世界規模の経済評価では、2035年に年0.92~3.23%の食料インフレが予想されるという。

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不規則に発生するダメージだけでなく、より長期の構造的リスクも明らかになりつつある。専門誌『Agricultural Systems(アグリカルチュアル・システムズ)』に2019年に掲載された研究によると、主要な農業地域で同時に作物が不作になる確率は、気温が摂氏1.5〜2度上昇するという仮定の下で急激に高まる。このような事態が複数の穀倉地帯で同時に起こると、世界の食料貿易の安定性は大きく揺らぐ。

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翻訳=溝口慈子

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