AIのブームはデータセンターやGPU、そしてますます巨大化するモデルのトレーニング競争によって加速している。だが、資金や報道、そして人々の関心の多くがソフトウェアに向かう一方で、それらを支えるハードウェアインフラの重要性が見落とされているのが現状だ。チップやセンサー、光学系、制御ハードウェアといった物理的システムが裏方で大きな役割を担っているにもかかわらず、危険なまでに資金不足であり、議論も乏しい。
ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)の調査によると、2024年におけるAI投資全体のうちインフラ分野に投じられたのは10%にも満たないという。大部分の資金はファウンデーションモデルや合成コンテンツツールなど、構築しやすくデモしやすい上にメディア受けもいい技術に集中している。
しかし専門家たちは、この偏った投資が限界を見せ始めていると指摘している。
その専門家のひとりが、深センを拠点とするディープテック企業(ここでいうディープテックとは半導体チップ、センサー、光学系などの物理的なハードウェア技術と、それらに組み込まれる高度なAI技術を融合させた先端技術分野のこと)、シンハンレーザー(Xinghan Laser)の創業者で会長であるジョウ・シャオフォンだ。同社は半導体レーザーチップから産業用LiDARシステムまで幅広く開発している。
シャオフォンによれば、次のAIの局面を決めるのは「誰が最大のモデルを持っているか」ではなく、「精度や耐久性、そして現実世界からのフィードバックを伴う形で、いかに物理システムに知能を組み込めるか」だという。なぜ彼はそう考えるのか、そしてそれは何を意味するのか? その理由のひとつとして「私たちはモデルに夢中になりすぎている」と彼は述べた。
モデルへの執着が視野を曇らせている
過去3年間、AIの議論はほとんどモデルを中心に展開してきた。誰が最大のモデルを訓練したか、誰が最も派手なデモを披露したか、誰が最速で1億ユーザーを獲得したかといった話題ばかりが注目を集めている。しかし、AIモデルがどれほど高度であっても、強固なセンサーや組み込み計算、高精度の認識システムがなければ、外科手術ロボットや自動運転車などを実際に動かすことはできない。
「真の知能は予測だけではありません。知覚して、相互作用して、行動することなのです。そして、そのすべてはハードウェアレベルから始まるのです」とシャオフォンは語る。
予測不能でリスクの高い環境下で稼働する機械に組み込まれた知能は、巧妙なソフトウェアだけでは到達できない。リアルタイムでデータを処理し、フィードバックに応じ、過酷な状況にも耐えうるハードウェアが必要となる。ところが、シャオフォンによると、まさにこの層こそが今のAI論議で見過ごされがちだという。



