サイエンス

2025.05.14 18:00

脳は真実より「物語」を求める 心理学者が明かす「偽りの結末」を避ける方法

New Africa / Shutterstock

3. 「偽りの確実性」が持つ罠

ここまでで、私たちの脳には、混沌とした真実よりも整然とした嘘を好むという、驚くべき癖があることは十分にお分かりいただけただろう。辛いことが起こったとき(トラウマを経験したときや、過ちを犯したとき)、人はただ状況を理解しようとするだけでなく、なんらかの確実性が欲しいと思う。だが、こうした欲求のために、時に私たちは、確実性と引き換えに、自分への思いやりを犠牲にしてしまう。

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2012年の研究によれば、人間の特性や能力は固定的だと考えるタイプの人(entity theorists:実体理論に立つ人)は、自身のつらい経験を、辛辣かつ断定的なナラティブで解釈する傾向にある。例えばこれは、「私は壊れている。私は悪い人間だ」といったものだ。こうしたストーリーによって、すぐさま幕引きは得られるものの、感情面での代償は大きい。こうした人々は、過去にとらわれがちで、成長や変化や寛容の余地があまりない。

対照的に、人間の特性や能力は進化し得ると考えるタイプの人(incremental theorists:増大理論に立つ人)は、経験をより柔軟にとらえ、そこから成長志向の意味を見いだす傾向にあった。彼らは、自分についての理解を修正することに長けており、特に物語を他者と共有する場合に、こうした傾向が顕著だった。

これが、「偽りの確実性」が持つ罠だ。コントロールを得たように感じられるものの、それはしばしば、自分を閉じ込める檻でしかない。単純な説明に依存すればするほど、そしてそれらが、自分を責め、あるいは自分を矮小化するものであるほど、私たちは、「成長していく存在」としての自分を反映しないストーリーに、自分を押し込めてしまうリスクを負う。

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結局のところ、私たちに必要なのは、最終的な結論ではない。必要なのは心理的柔軟性だ。すなわち、ストーリーを修正し、ニュアンスを受け入れ、自分自身を未完の作品とみなすことだ。偽りの幕引きは、短期的には心の痛みを和らげてくれるかもしれないが、真の成長につながるのは、好奇心とオープンな心なのだ。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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