最近の複数の研究により、デートアプリ(出会い系アプリ、マッチングアプリ)利用者たちがとっくに感じていたことが明らかになった──候補者のプロフィールを延々とスワイプしていると、「メンタルヘルスがむしばまれる」という事実だ。
デートアプリは、よりスマートに、より手早くつながりを見つけられるとうたっているが、それにもかかわらず、利用者のストレスや自信喪失、感情的な疲労の度合いを強めている。テクノロジーが進化しつづける一方で、人間の脳はそうではない。そのせいで、小さな拒絶の連続、時おり発生するドーパミンによる高揚、静かな燃え尽きというループに、多くのユーザーがはまりこんでしまうのだ。
進歩のパラドックス
デートアプリ業界は、2025年末までに13億ドル(約1900億円)規模を超えると予想されている。成長を後押ししているのは、AIによるマッチング、動画重視のプロフィール、「関係予測」アルゴリズムなどのイノベーションだ。一方で、そうしたテクノロジーの進歩にもかかわらず、ユーザーの報告する不満や孤独、感情的疲労の水準は上昇している。
『Computers in Human Behavior』に掲載された研究では、デートアプリの使いすぎには、不安とうつ症状の増加、自己評価の低下と正の相関があることがわかった。ユーザーインターフェースが「直観的」になっているにもかかわらず、感情面での代償は重くなっている可能性がある。
選択肢が多すぎる?
行動科学の分野では、昔から「選択のパラドックス」に対する警鐘が鳴らされてきた。これはつまり、「選択肢が増えるほど満足感が小さくなりがちである」という現象だ。デートアプリはこの作用を増幅する。デートアプリの提供する、延々とスクロールしても尽きない選択肢は、ユーザーを力づけるどころか、たいていは当惑させ、がっかりさせ、感情を疲弊させるのだ。
スワイプのたびに判定と評価を求められると、すぐに決断疲れに襲われる。プロフィールがぼやけてほかと区別できなくなり、「本当に求める相手」を見つけるのがいっそう難しく感じられてくる。「次善のもの」の追求が、集中力の持続時間と自己肯定感を徐々に削っていく。
問題をさらに悪化させるのが、カジノ設計からデートアプリに採り入れられた、間欠強化と呼ばれる心理学の原理だ。ときどき生じる「勝ち」(マッチングの成立、相手から来たメッセージ、一時的な注目など)がドーパミンのスパイクを引き起こし、その結果、体験がますます空虚に感じられるようになっていても、アプリを使い続けるように仕向けられる。言い換えれば、「つながる相手」ではなく、「高揚感を追い求めること」を脳が学習するわけだ。
結局のところ、選択肢の増加は、必ずしも恋愛の増加を意味しない。たいていの場合は、単に逡巡や、感情面での摩耗や疲労が増えるだけで、充足感は小さくなる。



