ブカツ——と聞けば、ほぼ全員が「部活」を思い浮かべるはずだ。主に中学高校の課外での、運動部・文化部の活動。略して部活。
前回、当欄で教員の過酷な労働実態を伝え、教師聖職者論vs労働者論を展開した。今回は教員の働き方改革の一環として進む部活動の「地域移行」を主軸に、教育とは何かという本質に迫ってみたい。
「部活地域移行まだまだ手探り」
部活と聞いて脳裏にすぐ浮かぶのが、2010年に刊行された朝井リョウ氏の小説『桐島、部活やめるってよ』(集英社刊)だ。
発刊当時、私は出身地の精神科病院で心療内科部長として働き始めた時期で、新人賞受賞作となった同書を読む余裕がなかった。ただ、固有名詞入りの題名に新鮮さを感じたのと、「部活」から青春小説だなと想像したことを覚えている。
教師の長時間労働の主因となる部活顧問について考え始め、ある思いで「桐島、部活やめるってよ」を読んだ。
映画や漫画化もされたので、ご存じの読者も多いだろう。高校バレーボール部キャプテンの桐島が突然辞めた。その影響で同級生5人の学校生活に起きた変化をオムニバス形式で綴ったもの。出色なのは、題名から想像した主人公であるはずの桐島本人は前面に現れず、登場人物の心理描写の地模様としてのみ書かれている点だ。
執筆当時19歳だった作者の感性と表現力を、映画化した吉田大八監督が文庫解説で称賛している。もちろん、私も面白く読んだのだが、教師との絡みは微塵もなく、こちらの下心(部活をめぐる教師や親の大変さの記述)は肩透かしとなった。一番の理由は、モチーフが部活そのものではないことだが、作品の舞台が高校ということも大きいと感じた。同じ「部活」でも、中学と高校では教師の関わり方の比重が全く違う。
ゴールデンウィークの最終日。中日新聞の一面に「部活地域移行まだまだ手探り」という記事が載った。

「部活地域移行まだまだ手探り」の見出しが踊る中日新聞一面(2025年5月6日付)
国は少子化や教員の働き方改革に伴い、公立中学の部活動を民間クラブなどへ地域移行するようスタート。2023年度からの3年間で段階的に進め、26年度からの6年間では、原則すべての部活動で休日地域移行を目指すとしている。
しかし、数十億円の予算を投じてなお、休日地域移行や民間指導員の活用などの実施見込みは全国公立中の運動部で4割、文化部で3割にとどまるという。
記事では、移行先となる運営者の資金問題など経済面の不安を指摘。神谷拓関西大教授(スポーツ教育学)は「活動できる施設と地域クラブを諸外国並みに」と要望し、「部活動に携わる教員の超過勤務手当も含め、教育にお金をかける議論を始めなければ」と危惧する。
はたして、問題は施設や金銭面だけだろうか?



