政治

2025.05.08 11:00

米国がクリミア併合を承認すれば国連憲章に違反、世界中で侵略戦争誘発も

ロシア首都モスクワの赤の広場で行われた軍事パレードの予行演習に参加する国家親衛隊。2024年5月5日撮影(Contributor/Getty Images)

ロシア首都モスクワの赤の広場で行われた軍事パレードの予行演習に参加する国家親衛隊。2024年5月5日撮影(Contributor/Getty Images)

ロシアとウクライナの和平交渉の一環として、米国がロシアによるクリミア併合を承認した場合、国連が保護する世界秩序を危険にさらすことになるだろう。専門家が指摘した。

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米シンクタンク大西洋評議会の定期刊行物『ウクライナ警報』を監修するピーター・ディッキンソンは、「米国がロシアのクリミア併合を承認することは、国連憲章に対する直接的な攻撃となる」と警告した。筆者の取材に応じたディッキンソンは、「国連は第二次世界大戦後、力によって国境を変更するという概念を否定する新たな世界秩序を支えるために設立されたのだ」と強調した。

この武力侵攻の禁止は、ドイツのアドルフ・ヒトラーによる血で血を洗う侵略戦争や帝国主義の再来を防ぐために1945年に発効した国連憲章の最も重要な構成要素となっている。ヒトラーの突撃部隊を撃退し、国連憲章を共同で起草した欧米列強は、憲章の目的を「われわれの生涯に二度も人類に計り知れない悲しみをもたらした戦争の災いから後世の世代を救うこと」に置いた。憲章の第2条には、「すべての加盟国は、その国際関係において、いかなる国家の領土保全または政治的独立に対しても、武力による威嚇または武力の行使を控えるものとする」と強調されている。

他国の領土に侵攻し、併合するために軍事力を行使することは「まさにロシアがウクライナでやろうとしていることだ」とディッキンソンは訴える。「米国がロシアのこうした動きを正当化することは、世界秩序にとって極めて有害であり、国連によって守られている現在の国際安全保障体制の最も基本的な原則を損なうことになる」

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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に豊かな黒海地域に位置するクリミア半島の併合という勝利を手渡せば、同大統領が将来、ウクライナの他の地域にも占領を拡大する恐れがあり、世界の他の拡張主義的な大国が各地で征服戦争を始めるきっかけを与える危険性もある。

米上院外交委員会のジーン・シャヒーン議員も「ロシアによる一方的なクリミア半島の併合を承認すれば、同国のさらなる攻撃を招くことになるだろう」と警告する。同議員は「侵略を奨励しても効果はないという、第二次世界大戦から学んだ基本的な教訓を忘れてはならない」と強調。米ホワイトハウスが進めているロシアとウクライナの和平交渉を巡っては、「弱い合意を急ごしらえしても、結局クレムリン(ロシア大統領府)の利益にしかならず、ウクライナのみならず世界中で将来の紛争を招くことになるだろう」との見解を示した。シャヒーン議員は、ロシア側に段階的に譲歩することは「この戦争を終わらせるために極めて重要な同盟国との統一戦線を分断する」ことであり、ロシアによるクリミア併合を事実上承認することは、米議会の超党派の合意にも反すると指摘した。

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翻訳・編集=安藤清香

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