ところがここへ来て、米国がロシアとの関係改善を模索する中でNATO諸国と対立したことに加え、ウクライナに対するロシアの侵攻を非難する国連総会決議に反対票を投じ、NATO条約第5条で義務付けられているロシアによる攻撃を受けたNATO加盟国の防衛に協力するかどうかについて矛盾したメッセージを発したことで、米国のドナルド・トランプ大統領は欧州首脳の反感を買っている。
欧州と米国の亀裂が深まっていることについて、フランスのフランソワ・オランド前大統領は最近、懸念を表明した。同前大統領は仏紙ルモンドの取材で、「米国民が引き続きわれわれの友人であったとしても、トランプ政権はもはやわが国の同盟ではない」と断じた。さらに、この根本的な変化を踏まえ、「フランス、英国、ドイツは真の欧州安全保障の先頭に立たなければならない」と呼びかけた。
ディッキンソンは「トランプ大統領は米国にとって第二次世界大戦以来最大の外交政策の転換を開始した」と指摘する。「欧州の首脳のほとんどは、依然として米国の好意を期待し、トランプ大統領の標的となることを恐れているため、公の場であまり多くを語ろうとしない。だが、閉ざされた扉の向こうに幻想はない。欧州の人々はもはや米国に頼ることができないことに気づいており、ポストアメリカの未来に向けて積極的に準備を進めている」
米国が欧州から自国軍を引き揚げる可能性を示唆する中、皮肉にもウクライナ軍がEUの保護者として台頭する可能性がある。ディッキンソンは次のように述べた。「欧州の中でも、ウクライナ軍は圧倒的に規模が大きく、他の追随を許さない戦闘経験を持っている。ウクライナは防衛技術の面でも最前線にあり、無人機(ドローン)戦争では世界の先頭に立っている。これにより、ウクライナは恐るべき軍事大国となり、数十年にわたる米国への依存に代わる、間もなく構築されるべき新たな欧州安全保障体制の重要な構成要素となるだろう」
つまり、欧州諸国はウクライナへの軍事支援を急速に強め、拡大する防衛産業に多額の投資を始める可能性が高いということだ。ディッキンソンはこうくぎを刺した。「もしウクライナが敗北すれば、欧州諸国は百戦錬磨のロシア軍と対峙(たいじ)する準備がまったくできていないことを自覚しているからだ」


