現代のインターネットは、ボットであふれている。すでにインターネットの全トラフィックのうち約50%が人間以外からのもので占められており、この割合は人々が人工知能(AI)エージェントにさまざまなタスクを代行させることで、2030年までに90%にまで跳ね上がると予想されている。
これは企業にとって大きな問題だ。オンライン小売業者は、ボットが人間よりも速く人気商品の在庫を買い占めることを望まないし、銀行は詐欺師がアカウントを乗っ取るのを防ぎたい。同時に、正当な目的を持つ良性のボットがその役割を果たすことを妨げないようにしたい。
ここにAIが加わることで問題はさらに悪化する。たとえば、ユーザーに特定の画像を選ばせたり、判読しづらい単語を読み取らせたりするCAPTCHA(キャプチャ)といった旧来のボット検出技術は、高度なAIモデルの手にかかればスルリと突破されてしまう。
OpenAIやLinkedInはじめ、3000社に本人確認ソフトウェアを提供
「AIは、人物の声の模倣や顔の偽装、偽造IDの作成を飛躍的に容易にしてしまった」と、サンフランシスコを拠点とする本人確認プラットフォームの新興企業「Persona(ペルソナ)」の共同創業者兼CEOのリック・ソン(34)は語る。
同社は、OpenAIやLinkedIn(リンクトイン)、Reddit(レディット)、DoorDash(ドアダッシュ)といった大手を含む3000社に本人確認ソフトウェアを提供している。ペルソナは、ユーザーに政府発行のIDの写真をアップロードさせたり、自撮り写真を撮らせたり、パスポートに内蔵されたNFCチップをスキャンさせるといった複数の手段を組み合わせて本人確認を行っている。
ペルソナは、リスクが高いと判断されたユーザーに、「生体確認テスト(liveness test)」を受けさせることもある。これは、IDを手に持って顔を動かすよう求め、そのユーザーが生身の人物であり、IDの本人であることを確認する手法だ。また同社の機械学習モデルは、ユーザーが利用しているネットワークや現在地とIDに記載された住所との距離、デバイスとのインタラクションの仕方といった要素からもリスクを検出可能だ。
2018年に創業のペルソナは2025年4月30日に、評価額20億ドル(約2860億円。1ドル=143円換算)で2億ドル(約286億円)を調達したと発表した。今回同社のシリーズDラウンドを主導したのはファウンダーズファンドとリビットキャピタルで、既存投資家のインデックス・ベンチャーズらも参加した。ソンによれば、同社の累計調達額は4億1700万ドル(約596億円)に達した。



