このドラマの最大の山場は、IMF介入を国民には隠蔽しておきながらIMFの代表(ヴァンサン・カッセル)を秘密裏に招き、3回にわたって行われる非公式会議の場面だ。ここでもIMFの救済を求めるパクと、経済の自立が妨げられるとして反対するハンは鋭く対立する。
200億ドルの金融融資をする代わり、銀行11社を営業停止にし金利を引き上げ、労働市場を改革せよと迫るIMF代表と、それに乗りたがるパクら政府筋。必死で食い下がるハン。
IMF介入が何をもたらすのかは、その少し前のシーンでユンが「富める者を生かす政策だ。経済破綻は国民のせいにするだろう」と的確に指摘している。
一連の会議シーンで一番緊張が走るのは、入国したIMF代表一行の中にアメリカの財務次官がいたことについて、ハンが質問する場面だ。IMFの背後に見え隠れするアメリカの影は何を意味するのか。
思えば韓国企業への投機を突然やめたのもアメリカの投資家たちだった。近年右肩上がりの韓国経済を金融危機に乗じてここらでテコ入れし、企業の民営化を促し雇用を流動化させ新自由主義を一段と推し進めた方が、アメリカをはじめとしたグローバルな世界経済にとっては都合がいいかもしれない。
実際には真偽不明だが、見る者をそんな推測に誘うような不穏な展開である。会議が進むにつれ、IMF代表を演じたヴァンサン・カッセルのクールで険しい風貌が、まるでハゲタカのように見えてくる。
こうして、韓国においてIMFによる”支援という名の支配”が始まる。金利は引き上げられ、賃金は15%オフになり、大量解雇で失業者が300万人に上り、自殺率は42%を超えたという。
自殺者は、ハン、ユン、ガプスのそれぞれの場面で描かれるが、そこに一人思いがけない人物が入っているのが逆にリアリティを高めている。また、政府に圧力をかけられているのか危機の内実を一向に報じようとしないマスメディアの描写などは、まさに人ごとではない。
20年後の登場人物たちのスケッチで終わるラストには、カタルシスはなく苦い後味を残す。しかし「権力の言葉に騙されてはいけない」「自分の目で物事を見よ」というメッセージは、見る者の心に強く刻み込まれるだろう。
連載:映画は世界を映してる
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