さらに、リモートワークの増加やスマホなどにひっきりなしに来る通知、「常に対応する」ことへの期待などが重なり、精神的負担は一層大きくなる。どんなに些細なものであっても、新たに決断するたびに明晰な思考力は削がれていく。これは心理学者ロイ・バウマイスター博士の自制心に関する研究に基づく概念で、決断疲れとして知られている。バウマイスター博士の研究によると、人の1日のメンタルエナジーには限りがあり、選択をするたびに少しずつ消耗していく。この認知力の消耗は性急な決断や先延ばし、バーンアウト(燃え尽き症候群)につながる。
「やらないことリスト」ではその逆だ。より鋭い見方で自分の習慣を評価することになる。本当の価値を提供せずに時間を浪費しているものは何か。目的を持ってではなく罪悪感に駆られて行っている義務は何か。やらないことを明確にすることで、より集中して仕事を行う余地が生まれる。
実際に機能する「やらないことリスト」の作り方
効果的な「やらないことリスト」の作り方とは、単に「ノー」と言うことではなく、適切なことに「イエス」と言うことだ。その方法を紹介しよう。
●過ごし方をチェックして「無駄な時間」を見つける
数日間、自分の時間の使い方を記録する。正直になろう。会議やメール、SNSのチェック、他の人からの「ちょっとした頼まれごと」など漏れなく記録する。メリットのないエネルギーを消耗する特定の活動に気づくだろう。
●非生産的なタスクを特定する
過ごし方をチェックしてから、以下のように自問してみよう。
・これは個人的な目標、それとも仕事上の目標に向かっているのか
・必要不可欠か、それとも習慣か
・これを誰かに任せたり、自動化したり、あるいはなくしたりできるだろうか。価値や重要性があまりないものは「やらないことリスト」の最有力候補になる。
●エネルギーを消耗するものを特定して排除する
頻繁なメールチェックや立て続けのミーティングなど、一見小さなタスクでも精神的に疲弊するものもある。エネルギーを与えるのではなく、消耗させているものを認識しよう。
●明確な境界線を設定する
やらないことの中には、何かを断ることが含まれるかもしれない。不必要なミーティングを辞退するにせよ、社会的な義務を制限するにせよ、境界線を設定することが自分の時間と集中力を守る鍵となる。
●インパクトの大きな習慣に置き換える
仕事を減らすことだけがゴールではない。価値の低い活動を、戦略的計画やスキルの構築など成長を促す習慣に置き換えることを目指したい。生産性とは最も重要なことをすることだ。


