宇宙

2025.05.02 10:30

スマホが宇宙と直接つながる時代に、国内通信インフラを激変させる通信衛星事情

(C)Project Kuiper/Amazon

楽天モバイルは2026年10~12月に開始

ASTスペースモバイル社の「ブルーバード・ブロック1」のイメージイラスト(C)AST SpaceMobile
ASTスペースモバイル社の「ブルーバード・ブロック1」のイメージイラスト(C)AST SpaceMobile

2026年に開始予定の楽天モバイルの「Rakuten最強衛星サービス」では、米国のベンチャー企業であるASTスペースモバイル社(以下、AST)の衛星「ブルーバード」が使用される。市販されるほとんどの機種に対応するが、料金などは現時点では未定だ。

advertisement

ASTの前身が設立されたのは2017年。楽天はその黎明期(2020年)に同社に出資するとともに、英国のボーダフォンと戦略的パートナーシップを締結し、以来、そのシステム構築を共同で推進してきた。出資総額は非公開だが、現在ではその株式の約15%を楽天、6%をボーダフォンが所有し、シスネロス・グループ(4.6%)、グーグル(3.9%)、AT&T(2.8%)なども同事業を支えている。

スターリング衛星の場合、DTC仕様の機体「V2ミニ」は622機(4月29日時点)が軌道上にあり、今後7500機まで増える予定だが、一方の「ブルーバード」(ブロック1)は現時点で5機のみ。ただし、スターリンクのアンテナ面積が6.2平方メートルであるのに対し、ブルーバードは10倍の64.4平方メートル。この巨大なアンテナによって広いエリアを少ない機体でカバーするとともに、地上のスマホが発する微弱な電波を確実に検出する。ASTと楽天が4月に行った実証テストでは、日本国内ではじめて市販スマホによるビデオ通話に成功した。

現状の5機では常時接続できないが、楽天のDTCサービスが開始される2026年第4四半期までに50機ほど打ち上げれば、24時間つながるシステムが完成する。楽天モバイルにおいては初期フェーズの周波数帯にプラチナバンド(700MHz帯)が使用されるため、ある程度の電波の「回り込み」(回折)が期待でき、空が見えなくても通信できる可能性がある。7月以降に打ち上げられる新型のブルーバード(ブロック2)では、アンテナがさらに大型化されて223平方メートルとなり、その面積比はブロック1の3.5倍に拡大する。ASTはこの機体を最終的には243機打ち上げる予定だ。

advertisement
スペースX社のスマホ対応のスターリンク衛星「V2ミニ」(C)SpaceX
スペースX社のスマホ対応のスターリンク衛星「V2ミニ」(C)SpaceX

スペースXのスターリンクにおいては、Tモバイルとの実証テストでビデオ通話のデモに成功(2024年5月)しているが、日本国内においてはテキストメッセージの送受信に成功(2024年10月)したとの公表に留まる。ただし、スターリンク衛星は今後、その軌道を360 ~340 km まで下げ、通信品質の向上をはかる。イーロン・マスク氏のポストによれば、2025年中に音声通話などの準備が整うとのことだ。

また、現行の「V2ミニ」は、ファルコン9に搭載して打ち上げるための仕様機あり、 現在開発中の超大型打ち上げシステム「スターシップ」の運用がはじまれば、より大型で高出力な「V2」の打ち上げが可能となる。その質量は1250 kg、アンテナ面積は25平方メートルとなる。それはV2ミニの質量の1.7倍、アンテナ面積は4倍を意味する。

次ページ > アマゾンはAWSを軸に軍用も

編集=安井克至

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事