フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領は、外国人リモートワーカーが1年間同国に滞在でき、さらに1年間更新可能な「デジタルノマド」ビザ(査証)制度の導入を承認した。
国営フィリピン通信(PNA)によると、申請は60日以内に開始される。申請者は18歳以上で、フィリピン国外で十分な収入があることを証明でき、犯罪歴がなく、医療保険に加入している必要がある。
英語が第二言語のフィリピンでは、成人の大多数が英語を理解し、話すことができる。生活費は都市部でも比較的安く、インターネット普及率は約90%で、ビーチにも恵まれている。
フィリピンは昨年、約560万人の外国人観光客を迎えたが、年間目標の770万人を23%下回った。同国のクリスティナ・フラスコ観光相は「比類のない自然の美しさや活気ある文化、そして人々の温かさを備えたフィリピンは、島々を旅し、働き、目標に向かって前進するデジタルノマドを歓迎する準備ができている」と述べた。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)以降の過去5年間で、外国に長期滞在するための規則が世界的に緩和されつつある。昨年は、日本、韓国、タイをはじめとする多くのアジア諸国がデジタルノマドビザを導入した。
デジタルノマドビザは、パスポート(旅券)に貼付される従来の紙のビザに代わるもの。ビザ発給国側は、自営業者や国外の企業にオンラインで勤務する給与所得者を誘致することで、現地市民の雇用を脅かすことなく地元経済を活性化することが期待できる。そのため、世界各国で人気の制度となっている。
国連世界観光機関の報告書によると、2023年時点で世界の約半数の国がデジタルノマドビザ制度を設けていることが明らかになった。ビザ発給国の約40%がデジタルノマドの所得税を免除し、17%は最低収入要件を設けていない。煩雑な手続きも比較的少なく、ビザ発給国の約4分の3はオンライン申請を認めており、処理時間は1カ月にも満たない。
世界経済フォーラムの昨年の白書によると、2030年までに世界ではリモートワークの件数が9000万件に達するという。人材ソリューション企業の米MBOパートナーズの報告書によれば、米国では昨年、1800万人以上の労働者が自らをデジタルノマドと見なしていた。これは労働者全体の11%に相当し、2019年から147%以上増加している。



