エシカルハッキング(倫理的なハッキング)というコンセプトは、矛盾したもののように聞こえるかもしれないが、この取り組みは、企業や組織のセキュリティを維持する上で非常に重要だ。エシカルハッカー(ホワイトハットハッカーとも呼ばれる)は、企業からの依頼を受けて、悪意ある攻撃者の手口を模倣し、組織の防御体制の脆弱性を見つけ出すセキュリティの専門家だ。彼らは非常に有益であり、クライアントを莫大な経済的損失から救うことがある。
サイバー攻撃が急増する中で、エシカルハッキングの需要は高まっている。この記事では、エシカルハッカーが用いる手法と、それが組織にもたらすメリットなどを紹介する。
エシカルハッキングとは?
エシカルハッキングは一般的なサイバーセキュリティ活動にあたり、セキュリティ専門家が組織のセキュリティシステムを突破して不正アクセスを試み、潜在的に貴重なデータを盗み出そうとする。このときエシカルハッカーは、悪意あるハッカーと同じ戦略や手法を用いるものの、見つけた脆弱性を悪用するのではなく、組織に報告して将来的な対策が取れるようにする。
世界的にサイバー攻撃やランサムウェアが増加するなか、多くのハードウェア企業やソフトウェア企業が自社製品のぜい弱性を特定するためにエシカルハッカーに頼るようになっている。たとえばグーグルのRed Teamは攻撃のシミュレーションを行い、製品の防御力をテストし、その結果に基づいて修正を施している。
悪用される前に弱点を修正し、防御力を強化
悪意あるハッキングは増加傾向にある。Check Point Softwareの最近の報告によると、2024年の世界的なサイバー攻撃件数は前年比で44%も増加した。
攻撃者は、ランサムウェア集団から敵対的な国家まで多岐にわたり、システムに侵入してデータを盗んだり、マルウェアを仕込んだりする。こうした攻撃は、財務面でも企業のレピュテーション面でも甚大な損害を引き起こす可能性がある。
セキュリティ上のリスクに対処する最良の方法は、誰かに悪用される前に弱点を特定し、対処することだ。そしてそれが、まさにエシカルハッカーの仕事だ。彼らは、犯罪者とまったく同じ手法を用いながらも、組織の防御力の強化を目指しており、そのために最先端の手法を常に学んでいる。
エシカルハッカーの役割
エシカルハッカーは、エシカルハッキングの実施にあたって、体系的な思考を通じて段階的なプロセスを踏む。第1段階は、企業のシステムに関する情報を集めて理解することだ。ここには、公開情報の収集やドメイン名、IPアドレス、ネットワークインフラの特定などが含まれる。
その次に、さまざまなツールを用いてターゲットシステムの脆弱性を調べる。この作業では、ネットワーク内の各デバイスやその接続状況の特定、悪用可能なオープンポートの検出、ソフトウェアやハードウェアの既知の脆弱性のスキャンなどが行われる。見つかった脆弱性は、悪意あるハッカーが用いるのと同じ技術で検証される。そして最後に報告書にまとめられる。
エシカルハッカーは企業に雇われていることもあれば、フリーランスとして企業が実施しているバグ報奨金プログラムに参加して脆弱性を報告する場合もある。



