今年、日本の音楽業界がひとつにまとまり、世界進出を視野に動き出す。その裏には、10年前からグローバル市場を見据えてきた中川悠介の存在があった。
3月16日、ロサンゼルスのピーコックシアターは約7000人の歓声で揺れた。この日開催されたのはJ-POPのショーケース「matsuri ’25:Japanese Music Experience LOS ANGELES」。海外リスナーも多いアーティスト、YOASOBI、新しい学校のリーダーズ、Adoの3組が3時間にわたってパフォーマンスを繰り広げた。
出演した3組は、現在のJ-POPを象徴する組み合わせと言っていい。隣国のK-POPはダンス&ボーカルを武器としたグループが中心で、プロモーションも勝ちパターンが確立している。それに対して今回の3組は、男女2人のユニット、4人のダンス&ボーカルのガールズグループ、ソロのボーカリストというように、編成はそれぞれ違う。グローバルで火がついたきっかけも、YOASOBIはアニメ主題歌、新しい学校のリーダーズは音楽フェス「Coachella」への出演、AdoはSNSと一様ではない。ひとつの枠におさまらない多様さがJ-POPの魅力だ。
「出演した3組は『日本のエンタメを世界に』という意識が高く、当日もすごい熱量だった。チケットも完売で、もっと大きなキャパでもできたくらい。現地で見て鳥肌が立ちました」
会場の盛り上がりをこう振り返るのは、新しい学校のリーダーズが所属するアソビシステムの中川悠介だ。「matsuri ’25」の主催は一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会(以下CEIPA)とトヨタグループだが、中川も仕掛け人のひとりだった。
「2年前、ロスの領事館や日系人コミュニティJXが中心になって、開催されたイベント『JX’23』に登壇しました(JXは日米間のエンターテインメントにおける交流を促進させる目的で設立)。そのときロスでも、日本のコンテンツの世界進出を手伝いたいという機運が高まっていることを知りました。日系人のみなさんは英語だけで、日本語はほとんど話せない。それでも協力したいという思いは心強かった。matsuriの成功をきっかけに、世界の他の都市でもチャレンジしたいです」



