「日本の強みは、繊細さや丁寧さ。かつてはものづくり産業でそれが発揮されていましたが、エンタメも個のクリエイティブは高水準でした。ただ、個が単独で世界で戦うのには限界がある。オールジャパンの環境が整ったことで、これからは個が外に出ていきやすくなります。機は熟したんじゃないかな」
環境が整った今、アソビシステムとしてやりたいことは山ほどある。まずひとつは、世界に拠点を増やすこと。例えば現在でも新しい学校のリーダーズがロスでライブをしている間にモデルのAMIAYAがミラノコレクションに行くなど、所属タレントが世界で同時多発に活動しているが、各地に拠点をつくればそれがやりやすくなる。「さらに『エンタメ×何か』で日本の良さを伝えたいですね。例えばロスにあるビルで、スタジオ、事務所機能に加えて、日本食を楽しめたり宿泊もできたりしたら面白い」。
個社として挑戦を続ける一方で、オールジャパン体制に貢献したいという思いも強い。エンタメスタートアップの先駆者として時代をつなぐ役割を担う覚悟だ。「僕は会社勤めの経験なしで会社を立ち上げた“野生”の起業家で、最初は名刺の渡し方すら知らなかった。そのままずっとストリートでやってこられたのは、業界の先輩たちに大事なことを教わったからです。若い世代に僕らが先輩から教わったことを伝えることで、日本のエンタメ業界をいいかたちにアップデートしていけるはず。自分の世代がハブになることで、より良い未来をつくっていきたいですね」
中川悠介◎1981年、東京都生まれ。イベント運営を経て、2007年にアソビシステム設立。「青文字系カルチャー」の生みの親であり、原宿を拠点に地域と密着しながら、ファッション・音楽・ライフスタイルといった、原宿の街が生み出す“HARAJUKU CULTURE”を、国内外に発信している。
本記事が掲載されている2025 年4月24日発売の「Forbes JAPAN」6月号では、「多彩な新・起業家たち100人」にフォーカスした企画「NEXT 100」を特集。地球規模から社会、地域まで多様化する課題に対して、アントレプレナーシップをもち、「自分たちのあり方」と「新手法」で挑む起業家やリーダーたちを「NEXT 100」と定義し、100人選出した。独自のスタイルや美意識で新たな価値指標をつくりながら、多くの人を巻き込み社会的・経済的インパクトを出している人こそ、世界の希望になる。次の時代をつくる「新しいクレイジーな人たち」に注目だ。


