マスクは14年連続でフォーブスの世界長者番付に名を連ねている。2012年に初めて登場した際の推定純資産は20億ドル（約2900億円）だった。当時のスペースXの時価総額はわずか18億ドル（約2600億円）で、テスラも40億ドル（約5900億円）に満たなかった。2015～20年初頭まで、マスクの資産は120億ドル（約1兆7600億円）から250億ドル（約3兆6700億円）へと着実に増えていった。その後、新型コロナウイルスのパンデミック（世界的な流行）期間中に、ミーム株投資家らがテスラの株価を急上昇させたことで、マスクの純資産は2021年に1510億ドル（約22兆1500億円）に膨らみ、翌年には2190億ドル（約32兆1300憶円）に達した。
その財産を利用して、マスクは政界にも進出。トランプ大統領に対する最大の献金者となり、2024年の米大統領選挙期間中に3億ドル近くを費やし、Xをトランプ陣営の意見を拡散するSNSに作り変えた。それが功を奏し、昨年12月にはテスラの時価総額が史上最高の1兆5000億ドル（約219兆4400億円）に達し、マスクは史上初めて4000億ドル（約58兆5000億円）超の資産を持つ人物となった。
マスクはトランプ大統領の最高顧問の地位を得て、新設された米政府効率化省（DOGE）のトップに立ち、政府に対して多大な権限を行使している。その裏には、自身の事業に利益をもたらす思惑が見て取れる。スペースXが運営する衛星インターネットサービス「スターリンク」は、間もなく米連邦航空局（FAA）から24億ドル（約3500億円）規模の契約を獲得するとも報じられている。米国務省は9月に4億ドル（約580億円）相当のテスラ製装甲車両を購入する予定だったが、世論の激しい抗議を受け、計画を撤回したようだ。
マスクの政治への影響力行使はとどまるところを知らない。最近では、北部ウィスコンシン州の最高裁判事を決める選挙で、保守派候補の支援に多額の資金を投入した。マスクは同州の2人の有権者にそれぞれ100万ドル（約1億4600万円）の小切手も渡していた。マスクが同選挙に影響を与えるために投じた資金は約2000万ドル（約29億2000万円）とみられている。
マスクは地球上で最も裕福な人物で、最も権力のある人物の1人かもしれないが、本人は依然として地球以外の天体に関心を向けている。──火星だ。トランプ大統領は就任演説で、米国の宇宙飛行士を火星に送り込むと宣言。マスクは後にこう述べた。「われわれはDOGEを火星に連れていく」
