世界で最も権威のあるワイン資格のひとつ、「マスター・オブ・ワイン(MW)」。その歴史は70年以上にも及びながら、現在の合格者は全世界で約420人しかいない。その厳しい試験を乗り越え、アジア人として初めて取得したのが、香港を拠点に活躍するワインジャーナリスト、ジーニー・チョー・リー氏だ。
ジーニー氏はソウル生まれの韓国系アメリカ人で、もともとはジャーナリストとして活動。文化、食、音楽などの取材を行う中でワインに魅了され、現在は世界中の航空会社や高級ブティックとタイアップするだけでなく、大学で教鞭を執るなど、30年以上にわたるワインキャリアを持つ。彼女の名は、今やワイン業界で広く知られている。
マスター・オブ・ワインはより数あるワイン資格の中でも学術的な側面が強い国際資格。「試験は4日間にわたり、毎朝ブラインド・テイスティングが行われ、午後には理論試験があるという非常に厳しいものです。私はこの試験が過酷であることを理解していましたが、受験当時はまだワイン業界のフルタイムのプロフェッショナルではありませんでした。」ブドウの栽培や醸造、ワインビジネス、ワイン業界における最新の時事問題などもテストは多岐に渡り、年単位の勉強とそれに見合ったテイスティングとコミュニケーションスキルも必要されるのがマスター・オブ・ワインである。
プライオリティが低く、趣味として追い求めていったワインの世界
「本当は壮大な野心と目標があってMWになったと言いたいけれど、正直なところ、私は偶然ワインの世界に足を踏み入れました。多くの人と同じように、最初は単なる趣味として始めたものが、ジャーナリストとしての仕事を通じて次第に深く関わるようになったのです。」と茶目っけたっぷりに彼女は語ってくれた。
元々報道畑にいた彼女は育児が少し落ち着いたタイミングを見計らい、ワイン好きが高じてワイン専門誌『ワインスペクテーター』や『デキャンター』などにも寄稿するようになった。そして「どうせ飲むなら学びたい」「どうせ学ぶなら資格を取りたい」との思いが強まり、WSET(Wine & Spirit Education Trust)などの国際的なワイン資格を取得し続けた結果、最終的にMWに挑戦することになった。「育児が私のプライオリティでした。だからこそ、資格を取ることに焦る必要もなく、じっくりとワインを学ぶことができたのかもしれません」と振り返る。



