アジアで根強い家父長制を逆手に、母親だからこそ挑戦できた
ジーニー氏は4人の子どもの母でもある。最初からMWを目指す野心に燃えていたわけではなく、好きなワインの勉強を育児の隙間時間で進めた結果、自然と資格取得に至ったという。現在、日本では夫婦における専業主婦の割合は3割を下回るものの、育児や介護でキャリアブレイクを取る女性も少なくない。そんな女性たちの中には、社会から取り残される不安を抱える人もいるかもしれない。ジーニー氏の「野心というより、趣味と育児をマイペースに極めた結果」というキャリアは、多くの女性にインスピレーションを与えるだろう。
また、現在アジアのMWのほとんどが女性であることについて、彼女はこう指摘する。「アジアでは、男性は家族を養う責任が重いため、キャリア形成においてリスクを取りにくい傾向があります。MWの合格率はまだ一桁台、つまり90%以上の確率で不合格になるため、費やす時間の割にリスクが非常に高いのです。だからこそ、私のような母親の方が、リスクを気にせずに勉強できる人が多いのかもしれません。」
ワイン市場の未来はアジアにあり
ジーニー氏は、近年のワイン業界におけるアジア市場の成長に強い注目を寄せている。特に東アジアではワイン消費が大きく変化しており、マーケットの中心がシフトしつつあるという。
「2008年に香港がワイン税を撤廃したことで、中国市場が一気に成長しました。それまでワインは西洋のものという認識が強かったのですが、中国をはじめとする東アジア諸国が主要な消費国となり、最近では生産国としても台頭しています。」
香港は2006年までワインに80%の高関税をかけていたが、2007年に半減、2008年にはワイン酒税を完全撤廃。これにより輸入は急増し、香港は世界で最も自由にワインの取引ができる「ワイン流通ハブ」としての地位を確立した。
コロナ禍で「同僚と焼酎」から「家でワイン」にシフトした韓国
一方、韓国でもワイン人気が急上昇し、特にコロナ禍を経て消費が急増した。その背景には、韓国独特の飲酒文化がある。ジーニー氏は「韓国では、ビジネスや社交の場では焼酎などの強いお酒が好まれます。しかし、コロナ禍で一人飲みや家庭での飲酒が増えたことで、ワインがより選ばれるようになりました。」と指摘する。
コロナ禍が終わったここ数年、韓国のワイン消費はやや下落傾向にあるものの、高品質なワインを求める消費者は増えている。「韓国のワイン愛好家は比較的若く、富裕層が多いのが特徴です。日本のワイン市場は高齢の男性が中心なのに対し、韓国では働き盛りの層が積極的に消費しており、これがワイン業界の注目を集める理由のひとつです。」



