コロナ禍で影響を受けたのは観光や飲食店だけではない。カラオケ業界も密室で人が集まる業態だけに大打撃を受けた1つだ。そんなカラオケ業界もコロナが明けてから、順調に業績を回復。コロナ禍前の水準に近づいていると、帝国データバンクが報告している。
それによると、全国の主なカラオケボックス運営企業を中心としたカラオケ市場(事業者売上高ベース)は、2021年度に1740億円まで落ち込んだものの、それから急回復を見せ、2024年度には3200億円まで拡大する見通しだ。これは、コロナ禍前の2018年度の3485億円に迫る勢いだ。

その背景には、物価高や消費者の節約志向により、カラオケでの客単価は伸び悩んだが、都市部では、コロナ禍で冷え込んだ団体利用などの宴会需要が復活。訪日客も取り込んで集客を増やしている。また郊外店では、ファミリー層による娯楽需要が好調で、大手カラオケルームではコロナ明けを見越して、積極的な新規出店や設備更新を進めたことが奏功し、拡大するカラオケ需要を取り込んだとしている。
また、防音性能の高いカラオケルームの特性を活かし、歌唱以外の目的で貸し切る「歌わないカラオケ」を利用するユーザー層も広がりをみせていることも1つの要因。コロナ明け直後は、リモートワーク需要が下支えしていたが、最近ではグループでアイドルイベントやコンサートのDVD鑑賞、ライブビューイングなどを楽しむ推し活ユーザー層の開拓が進み、客単価引き上げにも成功しているという。
一方で、物価高や人材確保により、経費が上昇して利益面で苦戦する店舗もみられたが、2025年度も引き続き、大手カラオケボックスでは積極的な新規出店を続けており、このまま業績を伸ばす勢いだ。「歌うだけの場所」からの脱却が、新たな需要を掘り起こし、コロナ禍前を上回る市場規模になるかもしれない。
出典:帝国データバンク「全国「カラオケ市場」動向調査(2024年度)」より