「私はこのプロダクトをユーザーにとってより価値のあるものにすることに完全にフォーカスしています」
発言の裏には、現状に甘んじてはいられないという潜在的な意識が見え隠れする。一般的に若者に人気のアプリは流行り廃りがつきものだ。BeRealは日本で絶好調だが、先行して普及した米国では、すでにダウンロード数がピークアウトしたという報道もある。歴史を振り返ればFacebookやInstagramは、ビジネスパーソンやシニアへとユーザー層を広げて成長を補ってきた。一方、「2分以内」というBeRealの特性が幅広い年齢層に受け入れられるかは未知数。23年末に動画投稿などの4機能、24年2月には著名人や企業向けの公式アカウント機能を設けるなどサービスを強化し、直近1年で1000万人が新規登録したが、MAUは4000万人で横ばいに推移している。
ユーザーをさらに増やし、つなぎ止めていくためには、継続的な体験価値の向上が不可欠だ。その意味で、BeRealの幹部社員をして「完全にプロダクトオタク」と言わしめるロフェが経営のかじを取るのは納得感がある。睡眠時以外はプロダクトのことしか考えていないという彼は、今後の展開について具体的な言及を避ける一方で、取材中しきりに自ら拾ったユーザーの声を話す姿が印象的だった。
「昨日は、高校生からスマホを空中に投げて写真を撮るテクニックを教えてもらった。それから、遠方に住んでいる家族にお互いの状況を伝えるツールとして向いているという意見も。この撮影でも、日本の大学生の使い方を知ることができた。自分で直接、生の声を聞くことが大事なんです。より創造性を発揮しやすく、よりつながりやすい本物のコミュニケーションツールとして、BeRealを次世代のスタンダードにしていきたい」
エメリック・ロフェ◎モバイル動画広告のVIDCOIN共同創業者兼CTO、フランスのモバイルゲーム大手VoodooのCTO、子会社WizzのCEOなどを経て、2024年6月にBeRealのCEOに就任した。


