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2025.03.15 15:15

映画 「ドマーニ! 愛のことづて」イタリアNo.1ヒット作の、気持ちの良いミスリード

映画 『ドマーニ! 愛のことづて』より ©2023 WILDSIDE S.r.l - VISION DISTRIBUTION S.p.A

見事なまでに爽やかなミスリード

実は、この「ドマーニ! 愛のことづて」という作品には、決定的とも言えるミスリードが仕掛けられている。通常、ミスリードには落胆させられるものも多いが、この作品では見事なまでにそれが物語のなかに嵌っており、ことのほか爽やかなラストシーンが用意されている。

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劇中には最後の場面に繋がる伏線も用意されているので、ああそういうことだったのかと胸落ちすること請け合いだ。とにかく、これほど気持ちの良いミスリードにあまり出会ったことがない。

「祖母や叔母、両親から聞いた話には、喜びと悲しみ、面白さと悲劇が入り混じっていました。彼らや彼女たちが目にしてきた人生には、親族や近所の人々、路地裏の子どもたちの物語がありました。

そのなかで、女性たちはしばしば『当たり前』として受け入れざるを得ない抑圧に直面していました。この映画では、そんな女性たちの絶望と、そのなかに芽生えた小さな希望を描きたかったのです」

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監督のパオラ・コルテッレージはこのように語るが、爽やかなミスリードを駆使して、「小さな希望」どころか、当時の「大きな」社会情勢をも見事に描き出してもいる。

「幼い頃から、戦後を舞台にしたモノクロ映画をよく観ていた影響もあり、その時代を真に描くときは自然と白黒のイメージが浮かびました。冒頭では、4:3のスクリーン比を使用し、昔の映画の雰囲気を再現していますが、その後は物語が広がるにつれて画面も変化していきます」

作品の時代設定が第二次世界大戦直後の1946年で、当時の雰囲気を描写するには、前述のモノクロームの映像とスタンダードサイズの画面比が必要だったとパオラ・コルテッレージ監督は語っている。

では劇中の爽やかなミスリードはどこへと繋がるのか、少しだけヒントを教えよう。国連は1975年に3月8日を「国際女性デー」と定め、この日を女性の十全かつ平等な社会参加の環境を整備するよう加盟国に呼びかける日としている。

イタリアでは、2月から3月に開花するミモザにちなんで、3月8日の国際女性デーを「ミモザの日」と呼んでいる。そしてこの日は、イタリアの女性たちがミモザの花を互いに贈り合う日となっているが、爽やかなミスリードによって導かれるラストシーンは、この「ミモザの日」を彷彿とさせるものでもある。

連載 : シネマ未来鏡
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