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2025.03.15 15:15

映画 「ドマーニ! 愛のことづて」イタリアNo.1ヒット作の、気持ちの良いミスリード

映画 『ドマーニ! 愛のことづて』より ©2023 WILDSIDE S.r.l - VISION DISTRIBUTION S.p.A

デリアの日々を耐えしのぶ生き方に、娘のマルチェッラは反発を感じていた。彼女は飲食店を営む裕福な家の息子であるジュリオからプロポーズを受けていたが、デリアは彼に対して危ういものを感じ取っており、自分のようにはなってほしくないと娘の結婚には乗り気ではなかった。

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そんなデリアのもとに1通の手紙が届くが、それを読んだ彼女は即座にゴミ箱に放り込む。しかし、その後あることがきっかけで手紙を拾い出し、新たな自分となるために決意の行動を起こすのだった。

デリアは一念発起して「明日」に向かって駆け出したのだが...... ©2023 WILDSIDE S.r.l - VISION DISTRIBUTION S.p.A

「ドマーニ! 明日へのことづて」は、本国イタリアでは観客動員600万人を記録し、ハリウッド映画の「オッペンハイマー」や「バービー」を押しのけて、2023年のイタリア国内興行収入のランキングではNo.1の大ヒットとなった作品だ。

またイタリアのアカデミー賞と言われる第69回ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では最多の19部門にノミネートされ、主演女優賞、助演女優賞、新人監督賞、脚本賞の主要4部門で最優秀賞に輝いている。

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監督は、主人公のデリアを自ら演じているパオラ・コルテッレージ。これまで「ジョルダーニ家の人々」(2010年)や「これが私の人生設計」(2014年)などの作品に出演してきたイタリアの国民的コメディエンヌで、今回の「ドマーニ! 愛のことづて」が映画監督としてのデビュー作品ともなった。

監督のパオラ・コルテッレージは作中でも主人公のデリアを演じている ©2023 WILDSIDE S.r.l - VISION DISTRIBUTION S.p.A 映画『ドマーニ! 愛のことづて』は3月14日(金)より Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開

「これは1940年代後半のイタリアのごく普通の家族の物語です。日常的に家庭内で繰り返される暴力や権力の濫用が、当時はまるで当たり前のように受け入れられていました。

映画の構想は、私の祖母たちが語ってくれた話に着想を得ています。そのなかには、笑い話のように語られる過酷な現実がありました。彼女たちは、困難な状況を他人と共有しながらも、人生の喜びと苦悩を同時に抱えて生きていたのです」

作品を手がけた理由について、このように語るパオラ・コルテッレージ監督だが、ただただ厳しい現実を描くのではなく、そのなかに笑いや喜びも交えているところは、コメディエンヌとして活躍してきた彼女のキャリアにも起因しているのかもしれない。

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