昔から、リーダーは楽観的になり、自信を鼓舞し、高い士気を保たなければならないと言われてきた。しかし、その楽観主義の方向が歪み、逃避に陥ってしまう場合がある。つまり、あらゆる難問を「災い転じて福となる」ととらえて無視したり、厳しい対話を「ネガティブなことをくよくよ考えないようにしよう」と打ち切ったりするのだ。こうした場合、リーダーシップは消え、「有害なポジティブさ」が始まる。
筆者が創業したリーダーシップIQの調査では、「難問がある場合、会社はそれを率直に伝えている」と考える社員は15%にとどまることがわかった。つまり社員の85%は、うわべを繕ったり現実から目を反らしたりするケースがある程度は起きていると考えているということだ。そして、リーダーが現実を認めるのを拒むと、深刻な結果につながる。信頼がむしばまれ、積極的な関与が急減し、社員の心が離れ始めるのだ。
有害なポジティブさがもたらすダメージ
現実から目を反らすと、レジリエンス(回復力)を育むことができない。それどころか、その反対だ。社員は、会社のごまかしを見抜くことができる。そして、リーダーが困難な現実から逃げていると感じたら、離れていく。
リーダーシップIQの別の調査によれば、会社の難問に関して充分な情報を与えられていないと感じる社員では、自分の属する組織を「良い職場」として人に勧める率が10分の1になるという。
そして、能力が高く、すでにアンバランスなまでに多くの仕事を抱えている社員への影響も忘れてはいけない。懸念を口にしても、空疎な常套句しか返ってこなければ、社員は意見を言うのをすっかりやめてしまう。それは一直線に、意欲の低下に、そして究極的には離職につながる。