AI彼氏ゲームで急成長する中国Papergames、創業者がビリオネアに

2024年2月25日、中国・上海で行われたモバイルゲーム『恋と深空』のオフラインデモンストレーションに参加するプレイヤーたち(CFOTO/Future Publishing via Getty Images)

2024年2月25日、中国・上海で行われたモバイルゲーム『恋と深空』のオフラインデモンストレーションに参加するプレイヤーたち(CFOTO/Future Publishing via Getty Images)

上海の新聞社で働く32歳の女性編集者アリシア・ワンはある日、理想の恋人を見つけた。27歳の心臓外科医レイは、背が高くてハンサムで、メッセージにはすぐ返信し、電話にもすぐ出てくれる。ワンが1日の出来事を語ると、彼は辛抱強く聞いてくれる。ただし、レイには1つだけ欠点がある。彼はスマホの画面の中にしか存在しないのだ。

ワンは、推定600万人が利用中の恋愛シミュレーションゲーム『恋と深空』に登場するプレイヤーの1人だ。上海のPapergamesが昨年1月にリリースしたこのゲームは、人工知能(AI)と音声認識テクノロジーのおかげで、5人の男性キャラクターとの会話が楽しめる内容となっている。

中国語に加えて英語や日本語、韓国語に対応する『恋と深空』は世界中で人気を博しており、2013年に設立されたPapergamesの年間売上高は、データ提供会社によると約8億5000万ドル(約1220億円)に達している。成長の早い非上場のゲーム会社の評価額は通常、年間収益の約3倍と試算されており、フォーブスは、同社の評価額を20億ドル(約2880億円)以上と試算した。また、同社の株式の過半数を保有する創業者でCEOの37歳の姚润昊(ヤオ・ルンハオ)の保有資産を13億ドル(約1870億円)と推定している。

Papergamesはフォーブスのコメント要請に応じなかった。

Papergamesのゲーム内で新たなシナリオや会話をアンロックするには課金が必要で、それが中国のダウンロードランキングでたびたび首位を獲得する要因となっている。例えばワンは、『恋と深空』にこれまで約3万5000元(約69万円)を課金したという。アップルのティム・クックCEOは、昨年3月に上海のPapergamesのオフィスを訪れた際に、同社のVision Proにこの種のゲームを導入する計画を話し合ったことを、中国のSNSのウェイボー(微博)に投稿した。

ロサンゼルスに拠点を置く調査会社Sensor Towerのアナリストのサミュエル・アウネは「『恋と深空』は、2024年最大のモバイルゲームの成功例の1つだ。このゲームは、プレイヤーとキャラクターの間に強い感情的なつながりを構築して、エンゲージメントと継続率を高め、収益化につなげている」とコメントした。

ゲーム内のキャラクターは、本質的には単なるピクセルとデータの集合体だが、提供する「心の支え」は本物だとワンは述べている。また、北京の証券会社に勤める36歳のリウ・スースーも、毎月約2000元(約4万円)をこのゲームに費やしており、「恋に落ちたばかりの感覚を思い出させてくれた」と既婚者の彼女は語った。

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編集=上田裕資

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