アメリカン大学で広報・戦略コミュニケーション学を教えるスコット・タランは「適切なタイミングで、正しいことがいくつも重なりました」と指摘する。「YouTubeはiPhoneやスマートフォンが普及する直前に登場したため、高価なカメラや編集ツールがなくても誰もが動画を撮影できる道が開かれたのです」
当初、計画していなかったサービス
ところで、現在の動画共有プラットフォームは当初の計画から外れたものであるはあまり知られていない。
「最初は動画の動画デートサイトを作ろうとしていたのですが、うまくいきませんでした」とタランはいう。
そこで行われた方向転換こそが、現在目にするような比類なきクリエイターコミュニティを生み出す結果につながったのだ。
シュライナーは「YouTubeは、コンテンツの創造と共有を可能にした最初の主要プラットフォームでした」と振り返る。「当時の動画は、誰かが楽器を演奏したり、ちょっとしたコメディを披露したり、楽しそうに食事をしているだけの平凡なものが多かったのです。でも、自分で動画を作って世界と共有できるというコンセプトは画期的だったのです」
こうした枠組みは、世代を超えたコンテンツクリエイターの活躍と、それを支える収益化モデルの基礎ともなった。
「多くのアーティストやミュージシャンなどにとっては、中間業者をなくし、消費者と直接つながる道を開いたことになります。2025年を迎えた今も、クリエイターやチャンネル、コンテンツの数は増え続け、ルールも変化しているものの、YouTubeは依然として存続しています」とシュライナーは続ける。
現実社会を映す鏡
タランはまた「動画ほど現実を映し出すメディアはない」とし、グーグルが2006年にYouTubeを買収したのは当然だと述べている。
いまでは、見る人それぞれに合ったコンテンツがあるといっても過言ではない。
「教育やエンターテインメント、情報など、タイヤ交換の方法から料理の手順にいたるまで、マニュアルではわかりにくいことも動画なら一目瞭然です」とタランはいう。「さらに、現在ではポッドキャストを聴く場所としてもYouTubeが最も人気であり、その変化と進化ぶりがよくわかります」
この進化はしばらく止まりそうにない。
「現在のYouTuberは、ただ動画を作るだけではありません。視聴者を分析し、自分のニッチを定義し、ブランドを構築しているのです」とシュライナーはいう。「TikTokやReelsといったサービスが台頭していても、YouTubeが長く活気があるのは、視聴者の興味や技術の進歩に合わせて柔軟に対応し、変化する嗜好やトレンドに適応し続けているからです」
(forbes.com 原文)


