危機における「実用主義者タイプのリーダー」
実用主義者は、高い基準を掲げ、目標を達成する(あるいは上回る)という揺るぎない意欲で知られる。危機に直面したときは、目標を再調整し、官僚主義を排除し、重要なタスクに集中することに秀でている。チームメンバーからはしばしば、不確実な状況でも決断力があり、たくましいリーダーと見られる。米国の大統領として世界恐慌と世界大戦を切り抜けたフランクリン・D・ルーズベルトのような歴史上の人物や、ジェフ・ベゾスのような現代のCEOを思い浮かべてほしい。
一方で実用主義者は、チームに無理をさせてしまう可能性がある。ストレス下では、ウェルビーイングのようなソフトな施策よりも収益を重視する傾向がある。危機的な状況でこのようなアプローチをとれば、チームメンバーの燃え尽きや離職につながる恐れがある。
実用主義者にとって重要なのは、結果重視の特性と共感のバランスをとることだ。迅速な意思決定を下す一方で、チームメンバーのメンタルヘルスや士気について本気で心配することも心がけよう。
危機における「理想主義者タイプのリーダー」
理想主義者は、イノベーションを好み、難題が創造的な潜在能力を解き放つと信じている。危機においては、その楽観主義とビジョンがインスピレーションの源になる。理想主義者は、問題を再発明の機会と捉えることができる。ビジネスモデルの転換、新たな取り組み、画期的なアイデアを実現するためのチーム結成などだ。皆が圧倒されているとき、このような姿勢が気分を高揚させる。しかし、理想主義者が現実的な制約を無視すれば、考えが甘いと見なされかねない。理想主義は、行き過ぎると、具体的な解決策を求めるチームをいら立たせる可能性がある。サプライチェーンの崩壊、PRの大失敗といった緊急事態には、チームはより直接的な行動計画を必要としているかもしれない。
楽観的であることは大切だが、理想主義者はそれを、詳細な実行手順と明確な期限で補うべきだ。希望と実用主義のバランスをとることで、楽観主義は現実的かつ実行可能なものとなる。
危機における「管理人タイプのリーダー」
管理人は、予測可能で安定した環境をつくることに優れている。構造に対する親和性があり、「安定した手」が必要なとき、危機管理の担い手になる。管理人は、明確なプロセスを重視している。危機対応手順の策定、役割分担、最新情報の提供などだ。管理人の下で働くチームメンバーは、多くの場合、外の混乱にもかかわらず秩序が維持されていることに安心感を抱く。しかし、急速な変化が必要なとき、一貫性を求める管理人の姿勢は足かせになるかもしれない。市場が坂を転げ落ちるような状況では、確立された方針に過度に依存すると、組織が無防備な状態に置かれる恐れがある。また、硬直したルールが原因で、迅速なイノベーションが妨げられる可能性もある。
激動の時代に管理人が成功を収めるには、柔軟性が最も重要になる。古いパターンを壊し、新しい構造を取り入れる意欲があれば、後れをとることなく、ますます強くなることができるだろう。