リベンジ退職の悪循環を断つには
人材開発企業のSHLで上級コンサルタントを務めるマレー・ベスター博士は、リベンジ退職を回避し、リスクを最小化する責任は、雇用主である企業側にあると考えている。ベスター博士によれば、これは単なる一過性のトレンドではなく、事業主に対して、急速に変化しつつある職場の現実に適応するよう促す警鐘だという。リーダーシップコンサルティング企業のDDIで、リーダー向けインサイトの提供を担当するシニアバイスプレジデント、マット・パエーゼによると、リーダーがこの悪循環を断つ最初のステップは、楽観的な見方を捨て、厳しい質問を自らに問いかけることだという。具体的には、以下のような問いが挙げられる。
・自身の行動や発言によって、マネジメントの仕事の価値を下げていないか?
・従業員が持つリーダーシップの可能性を本当の意味で認め、育てているか? あるいは、単に業績の良い者を昇進させているだけか?
・燃え尽きを招く、悪しき職場文化の蔓延を防ぐために、ワークライフバランスを理想的な状態に整えているか?
小論文作成サービスのEduBirdie(エデュバーディー)で最高人事責任者を務めるエイブリー・モーガンは、リベンジ退職の悪循環を断ち、最高の人材を社内にとどめるために必要な4つのポイントを教えてくれた。
1. 危険信号を早期に察知する
「従業員の心は、一夜で離れるわけではない。従業員のモチベーションが欠けていることを示す、わずかな兆候にも目を配るべきだ。具体的には、締め切りを守れない、コラボレーションの減退、慢性的なやる気の欠如などが挙げられる」「実績を評価する定例の1対1のミーティングでは、直接的だが、従業員の心情にも寄り添った、以下のような質問を投げかけよう。例えば、現在割り当てられている仕事量はどれほどか? あなたの1日をより良いものにするために、何か1つを変えるとしたら何だろうか、といった質問が良いだろう。これによって、本音のフィードバックを得るための扉を開けておくことができる。自らの意見が聞き入れられていると実感できれば、勤務先との心理的なつながりが断ち切られたり、従業員が急に退職したりする確率は下がるはずだ」
2. 即座に行動に移し、信頼感を醸成する
「約束が守られないことは、職場における信頼関係が損なわれる要因の1つだ。例えば、リーダーが従業員に対して成長の機会を約束した一方で、個々のタスクにいちいち口を挟んでいたら、従業員はこのダブルスタンダードを歓迎しないだろう」「再び信頼を構築するには、むやみに約束をすることを避け、現実的な目標を設定し、常時結果を出すことだ。これは、たとえ小さなタスクでも構わない」
「ここで重要となるのが透明性だ。上司は、自分の決断の裏にある理由づけを明確に示そう。自分が輪に加えられていると感じると、従業員が会社に長く居続ける可能性が増すはずだ。2週間おき、あるいは1カ月ごとに、現状を話し合うスタンドアップミーティングを開催し、他のチームメンバーと同様に、上司も報告を行うようにすることは、こうした雰囲気を作るのに非常に役立つだろう」