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2025.01.27 14:30

日本勢がAI市場で生き残る攻略法を探る

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では、こうした流れのなかで、日本にとっての勝ち筋はどこにあるのか。
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「仮説として有りうるのは、日本の強みが生きる領域にAIを活用するビジネスだ」と話すのは、インキュベイトファンド代表パートナーの和田圭祐だ。例えば、漫画やアニメなどのコンテンツIPや化学・素材など、日本が世界をリードしている産業のデータ活用。21年設立のオレンジでは、漫画に特化した生成AIモデルを独自に開発。未翻訳の国産漫画を多言語翻訳し、自社が北米で運営する電子漫画ストアを通じて配信する事業を開始している。生成AIベンダーになるのではなく、生成AIに取り込むデータで、収益構造の高いビジネスを生み出すわけだ。

その意味では、AI技術だけでなく、何をAIと組み合わせるかが鍵を握っているといえる。グローバル・ブレインInvestment Group Directorの御手洗茂は、「AIエンジニアの数ではなく、どれだけデータを集められるか、業務ノウハウや業界解像度を高められるかが重要」と指摘する。

また、ここ数カ月でバズワード化した「AIエージェント」。人間が都度介入することなく、信頼できるメンバーのようにバックグラウンドで自律的に稼働し、経費精算や出張のスケジューリングなど、特定のタスクをこなしてくれるという概念のAIシステムだが、ここでは個社ごとのルール、業務知識、運用中のツールをうまくAIに組み込むことが必要になる。日本固有の商慣習や業務プロセスに関わるAIエージェント化では、地場のプレイヤーが活躍できる余地が大きい。
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そして、次なる潮流として注目すべきは、自動運転やロボティクス、ヒューマノイドなど物理空間と生成AIの融合だ。例えば、米国で24年に設立されたばかりのPhysical Intelligenceは同年11月、自律的に洗濯物をきれいに畳んだり、コーヒー豆を入れたりする家事AIロボットの試作機を公開し、大きな話題を呼んだ。

こうしたハードウェアがかかわる分野は、膨大なデータが溜まっているインターネット空間と異なり、AIモデルを構築するためのデータそのものが不足している状況。ロボットの量産化にあたっては、ものづくりを得意とする日本の強みを生かせる可能性も高い。

マイクロソフトは24年11月、東京にAI研究拠点を開設したが、そこで注力する研究テーマも「Embodied AI(身体性を有するAI)」だ。新技術の普及過程を示すガートナーの「ハイプ・サイクル」24年版では、生成AIが「過度な期待」のピーク期にある一方、ヒューマノイドやEmbodied AIは「黎明期」と、まさにこれからの段階にある。

JICベンチャー・グロース・インベストメンツ代表取締役社長の鑓水英樹がこうまとめる。

「我々は新たな転換点を迎えつつある。AIの次なるフロンティアは、明らかに実世界との相互作用へとシフトしていく。ロボティクスや自動運転の分野では、コンピュータビジョンとNLP(自然言語処理)の統合的な活用に加え、物理的な制御や実世界でのリアルタイム判断という新たな課題に挑戦している。この領域でブレイクスルーが起これば、産業構造の劇的な変革は必至だ。次なる10年で訪れる社会変革は、我々の想像をはるかに超えるものとなるだろう」

文=眞鍋 武

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