欧州

2025.01.09 09:00

「自殺同然」の車両突撃でなく徒歩で前進遂げるロシア軍、ウクライナは対抗に苦慮

Shutterstock.com

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ロシアがウクライナで拡大して2年10カ月半たつ戦争の1300km近くにおよぶ戦線の全域で、小型のドローン(無人機)は装甲車による大規模な突撃を自殺も同然の行為にしている。ロシアのある軍事ブロガーは、エストニアのアナリストであるWarTranslatedが紹介・英訳している投稿のなかで、ロシア軍部隊による装甲車での突撃は「毎回、成果がゼロだ」と嘆いている
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だからといってロシア軍が前進できていないわけではない。実際にはロシア軍は前進を遂げている。とりわけ、ウクライナ東部ドネツク州の要塞都市ポクロウシクの南方でじわじわと西進し、ロシア西部クルスク州でもウクライナ軍の突出部を徐々に押し込んできている。ウクライナ軍の強力な部隊が昨年8月の侵攻でつくり出した突出部の広さは現在、およそ650平方kmほどに縮んでいる。

ロシア軍はどのように前進しているのか。それは、車両をあとに残して、歩兵が徒歩で戦闘に入ることによってだ。前出の軍事ブロガーは「歩兵は砲兵とドローン(無人機)の支援を受けながら、ゆっくりと、だが着実に、樹林帯や家屋をひとつずつ(ウクライナ側から)奪っていく」と書いている。

ロシア軍は新たな「歩兵優先」ドクトリンを取り入れつつある。米ワシントンD.C.にあるシンクタンク、カーネギー国際平和財団のシニアフェローであるマイケル・コフマンは、ロシア軍のこうした戦術について「装備の損失を減らすためでもあるだろうが、偵察ドローンと攻撃ドローンによって広範にカバーされた周到な防御を乗り越える能力が、全般的に欠けているからでもある」と解説している。散らばった歩兵は長い車列よりも狙うのが難しい。
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もっとも、ロシア軍の指揮官のなかには依然として、戦車や歩兵戦闘車のほか、トラックやバン、乗用車、全地形対応車(俗称「ゴルフカート」)といった即席の戦闘車両を使おうとする者もいる。同じ軍事ブロガーは、車両での突撃では「誰も目標に到達せず、兵士は下車できず、(ウクライナ側が)機関砲の砲火でずたずたにされることもない」と不満を示している。

このブロガーは、こうした「自殺的な走行」を命じている指揮官たちを「天才」と皮肉っている。彼らは車両とその搭乗者をドローンが飛び交う中間地帯を通る無意味な「バンザイ攻撃」に送り込み、その結果、何も得られず、すべてを失う。それどころか、自軍の車両が撃破される様子をウクライナ側のドローンに撮影され、「ウクライナ軍にとって励みになるコンテンツ」を提供することにすらなる。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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