起業家

2025.01.10 08:00

「10倍長持ちする女性向けタイツ」を製造するカナダの起業家

キャサリン・ホーマス(C)instagram @Sheertex

キャサリン・ホーマス(C)instagram @Sheertex

2017年、カナダのテック起業家であるキャサリン・ホーマスは、長期間使用しても穴が空いたり裂けたりしない女性向けの薄手タイツを作るための素材を探していた。検討を重ねた結果、最終的に彼女が見つけたのは、防弾ベストに使われるほどの高い強度を持つことで知られる、超高分子量ポリエチレンと呼ばれる特殊な繊維だった。
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ホーマスが、ようやく手に入れたその繊維を中国の工場に送ったところ、「機械が壊れてしまった」という怒りのメッセージが返ってきたという。強度が高すぎるその繊維は、機械に詰まってしまったのだ。

現在34歳のホーマスは、そのような不穏なスタートを切ったものの、従来の10倍長持ちする薄手のタイツを販売するビジネスは、大規模なものに成長し、アパレル業界の廃棄物を削減するサステナブルな取り組みとしても注目されている。2020年にフォーブスの『30アンダー30』に選出された経歴を持つ彼女が立ち上げたスタートアップのSRTXは、2024年に3000万ドル(約47億円)の収益を見込んでいる。

同社は、初期のウェブサイトでの直接販売からH&Mやコストコ、QVCなどの小売企業と提携することにビジネスの主軸を移行し、2025年には7000万ドル(約110億円)以上の収益を上げようとしている。
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主に女性向けタイツの製造元としてSheertex(シアテックス)と呼ばれるブランドを展開するSRTXは、新たなアパレル素材の開発にも取り組んでいる。その1つが、有害物質のPFAS(ピーファス)を含まない撥水素材で、水着などでの使用を想定している。彼女は、この取り組みを通じて、SRTXをサステナブルな素材開発企業へと変革したいと考えている。

「私たちは、これまで存在しなかった新たな素材を生み出すことで、サステナブル業界のデュポンになろうとしています」と、ホーマスは語る。

SRTXは、この目標達成に向けて累計1億4300万ドル(約226億円)の資金をアパレル大手のH&Mやルルレモンを創業したチップ・ウィルソン、持続可能性に注力するベンチャーキャピタルのArcTern Venturesなどから調達しており、直近の2年前のラウンドにおける評価額は3億5000万ドル(約547億円)に達していた。

SRTXは、カナダで製造を行い、米国を主要な市場としていることから、ホーマスはトランプ次期米大統領の関税に関する議論を注視している。「この問題は、私たちにとって確かに懸念事項です」と彼女は述べ、現状の不透明さの中でどのように行動すべきかは判断が難しいと付け加えた。

以前にShopLocketというハードウェア分野の起業家向けのマーケティング支援会社を創業し、売却した経験を持つホーマスが、長持ちするタイツの事業を思いついたのは7年前のことだ。

Yコンビネータを経て事業を拡大

事業の立ち上げに向けて、アパレル素材の調査を行った彼女は、この分野では1930年代にナイロンが発明され、1950年代にスパンデックスが生まれて以降に、新たな素材が開発されていないことに気づいたという。
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編集=上田裕資

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